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目｢今日はなんの曲？｣
いつもと同じ質問をしながら前の席に座る。
｢なんだと思う？｣
目｢...当ててあげようか？｣
こんな何気ない会話も毎日同じ。
私たちにとってはルーティーンのようなもの。
目｢今日は...｣
彼が口にしたのは最近流行りの失恋ソング。
｢...なんで分かるの。｣
目｢ははっ、やっぱり？｣
｢だって今日翔太くんと遊ぶんでしょ？｣
ほんと単純、なんてつぶやく。
無理して笑ってみせる彼を見ているのが辛くて目を背ける。
渡辺翔太。
隣のクラスで、彼とは中学からの仲。
そして...私の想い人。
私と蓮は普通のカップルではない。
蓮と付き合い始めたのは1年のとき。
目｢あの...｣
放課後教室にひとり残っていた時。
右側から聞こえた声に振り向く。
目｢Aさん？だよね？｣
そこに立っていたのは入学した時から話題になっていた人。
...まあ確かにイケメンだけど興味はない。
｢そうだけど...目黒くん、何か用？｣
名前を呼んだだけで顔を赤らめる。
へえ、ずいぶん純粋なんだ。
目｢あの、俺、Aさんの事が好きで...｣
この言葉を聞くのは何度目だろうか。
私たち初対面だよ？
私のことを知りもしないのによく告白なんてできるな...。
｢あの、告白なら私には好きな人が...｣
目｢翔太くん、ですよね｣
被せるように発した彼の言葉に目を見開く。
｢...なんで知ってるの？｣
目｢Aさんのこと、見てたんで...｣
普通の人が言ったらまるでストーカー。
でも許されるのは顔がいいから。
｢...まあそういうことだから。気持ちには応えられない...です。｣
動揺で声が震える。
こんなの私らしくない。
目｢...知ってた。｣
｢...え？｣
急に声色が変わった彼を思わず見上げた。
ふっ、と余裕そうに笑う。
｢...どういうこと？｣
目｢まあ100%振られるだろうなぁって｣
なんて言いながら隣の席に座る。
目｢...でも俺さ、他の人と違うの｣
｢諦めるってことが出来なくてさ、ごめんね｣
瞬間悟った。
厄介なやつに捕まったんだ。
目｢...こんなこと言うのも癪だけど｣
｢代わりでいいよ、付き合って｣
｢でも私、翔太以外は...｣
目｢いいよ、Aは翔太くんのことずっと見てていい。｣
呼び方が変わってることなんて気にする暇もないくらいに戸惑う。
｢...どうしてそこまで、｣
目｢俺は｣
｢名前だけでもAとの繋がりが欲しい。｣
結局私が折れて交際が始まった。
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作者名：なあや。
| 作成日時：2020年5月24日 2時
