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渡辺side
そのまま後頭部を抑え込むように手を回せばAの手が俺の服を掴む。
唇を舌でなぞってみてもAは頑なに口を開けようとしない。
仕方なく後頭部に回した右手を下ろして、Tシャツの中に滑り込ませる。
背中にあるつなぎ目に手をかける。
｢...やっ｣
それに反応してAが言葉を発した瞬間。
かすかに開いた隙間から舌をねじ込んだ。
逃げる舌を追いかけるように絡み取れば、静かな空間にぴちゃぴちゃと水音が響いた。
しばらくその熱を堪能したあと、胸元を軽く叩かれて一度唇を離す。
｢病人なんだから...｣
Aが乱れた息を整えながら呟く。
渡｢もう治ったって｣
｢でもさっきまで高熱だったんだからね？｣
渡｢俺もう元気だもん｣
呆れたようにため息をつくA。
そしてそのまま背中に手を回し、ホックをつけようとする。
俺はその腕を咄嗟に掴んだ。
｢...なに？｣
渡｢...まだ1時じゃん｣
｢うん｣
渡｢...シよ？｣
｢でも明日課外ある、｣
渡｢そんなの休めばいいじゃん、ね？｣
Aが上目遣いに弱いのはわかっている。
｢...1回だけね｣
ほら、すぐ折れた。
上がりそうになる口角を必死に我慢してAを押し倒した。
.
｢1回だけって言ったのに...｣
渡｢ごめんって｣
｢どこにそんな体力あるの...｣
渡｢知らねぇ｣
1回だけ、という約束を守ることが出来ず、終わった頃には外は明るくなっていた。
｢...昨日の翔太はすごく可愛かったのに｣
渡｢そんなの覚えてねえもん｣
｢じゃあ教えてあげようか？私が出かけてたら寂しくて泣いちゃうし、寝る時も『手握ってて？』って言うし、お粥も『あーんして？』って、｣
調子に乗って話し出したAの口を無理やり塞いだ。
すぐに離れて目を合わせれば、怒ったように口を尖らせるA。
｢何すんの...｣
渡｢お前が調子乗るからだろ｣
｢あーあ、昨日の翔太なら絶対そんなことしないのに〜｣
渡｢...昨日の俺の方が好きなの？｣
そう問いかければ一瞬動きが止まったが、すぐに顔を真っ赤にして目を逸らした。
｢...どっちも好き｣
渡｢...もう無理、もっかいシよ｣
｢ちょっ、だめだって、｣
結局止まることができず、終わったあとはAに散々怒られた。
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作者名：なあや。
| 作成日時：2020年7月4日 0時
