[Elext City] Ⅲ (ページ16)

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ガチャリ、という、何かを施錠するような音が聞こえた。

気持ち悪いくらいにぐちゃぐちゃだった、最早感覚とも呼べないくらいの視界も、味覚も、全てがピタリとやんだような、そんな心地だった。
「………ぅ、…あ…？」
心配そうに覗き込んでいた後輩の顔が明瞭に映る。

Juri「京本さん…？」
「……じゅ、り…？」
Juri「はい、樹です、…よかった…」

賭けに勝った。ラウールはよし、と小さくガッツポーズする。
Kochi「あーあ。残念だったねぇ」
阿部「お前が邪魔したからじゃん」
Kochi「負け犬の遠吠えは止めといた方が良いよ。残念だけど、どうやら少数派だったみたい」
ラウール「…阿部さん、」

ラウールが言葉をかける前に、阿部はすぐさまログアウトしてどこかに行ってしまった。
Kochi「残念だなぁ、折角面白いコンテンツだと思ったのに」
ラウール「あ、あの…ありがとうございました、」
Kochi「君に感謝される筋合いはないけどねぇ。俺は駆けに負けた少数派だよ？」
ラウール「え？」
Kochi「期待してるよ、新人くん」

意味深な言葉と疑問を残してログアウトしたのだろう、消えてしまったその男性がいた場所を見つめていたラウールに、Juriが「ねぇ」と声をかける。
Juri「ありがとうね」
ラウール「…お礼は、僕にじゃなくて皆さんに言ってください。…皆さんが、救ってくれたから、」
Juri「こういうのは素直に受け取っておいたらいいんだよ」

まだ少しぐったりとした様子の京本は、じっとこちらを見ている。
見慣れない自分の事を警戒しているのだろうか。
ラウール「…必ず、誰の犠牲がなくてもみんな楽しめるような、そんなゲームにします、だから」
Juri「うん。…北斗の事、よろしくね」
ラウール「はい！」

メニュー画面を開いて、ログアウトのボタンを押す。
刹那見えた、京本の顔はずっと穏やかな風に見えた気がした。