[Elext City] Ⅲ (ページ13)

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rau♡《阿部さん…》
久しぶりに見た阿部のアバターの表情は無表情だった。
伺えない顔色に恐怖が顔をのぞかせる。

Kochi《遅かったね》
@be《誰かさんが暗躍しようとしている所為でね》
冷たい視線がラウールの方に突き刺さる。
@be《本当、余計な事して》
はぁ、と溜息を吐いた阿部は、淡々と銃をラウールの方…ではなく、京本とバグの方へ向ける。

@be《無駄な手間取らせやがって》
s@ku《あべち■■、だ■！》
@be《この[Elext City]を完成させるには、貴方のようなバグがいちゃ駄目なんです。邪魔なんですよ》
Juri《邪魔なんて、そんな…！》
@be《ただのプログラムが俺に反抗しないで》
Juri《それでも、阿部さん前までは佐久間さんの事慕ってたじゃないですか！》
@be《佐久間さんはもう死んだ！》

目の前で繰り広げられる阿部とJuriの論争に、ラウールは目を丸くする。
Juriは今確かに｢佐久間さん｣と言った。
あの人型のバグは、向井から前に聞いていた元社員だというのか？

@be《深澤さんも佐久間さんも、きょもも照も樹も、みんな死んだ。ここにいるのはただのプログラム。…北斗が勝手に模して作った、》
Juri《違う、俺たちは…！》
@be《それに勝手にメインサーバーを助けようなんてほざいてるけど、そもそも最初にメインサーバーになる事を提案したのは向こうからだよ。俺から言った訳じゃない》

Juri《……でも、でもっ、誰かの犠牲の上に成り立つ娯楽なんて、あっちゃいけないんです！》
@be《そんな綺麗事で[Elext City]を壊す訳にはいかないの。死んだみんなが報われない》
Juri《違う、俺たちはここにいる！》
@be《偽物風情が偉そうにみんなの事を語らないで！》

パン、と引き金が引かれた音がした。
Kochiによって体勢を崩され、守る事も叶わないHikaとFukaの頭上をすり抜け、弾丸は京本とs@kuの前にいたJuriの方へと一直線に飛んでいく。
s@ku《樹！》

……Wake up?

ピンク色の虹彩が、自分から離れていくモザイクだらけの幼馴染みを捉えた。
人が格段に減った世界では、視界も大分明瞭に見えた。
大事な大事な後輩を横に突き飛ばして、モザイクだらけの｢人型バグ｣(s@ku)は、その弾丸を受けた。
──緑色の閃光と、それを受けた桃色の電流を、目覚めたばかりの｢彼｣はその目にまじまじと焼き付けてしまった。