[Elext City] Ⅱ (ページ6)

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松村「…だって、今のままじゃ、あの人はずっとあのままなんだよ…？」
Juri「わかってる。でも…シャットダウン、って」
松村「このままこの世界が続いたら、あの人はずっと、ずっとこの世界の犠牲になる。…だから、」
Juri「…この世界を、シャットダウンする、って事？」

それをした時の末路は目に見えている。
あの人は救われるかもしれないが、NPCは、FukaもHikaも、目の前にいるJuriさえも、もう消えてしまって2度と会えなくなるのだろう。

けれど、今のままでは、人型のバグである「彼」を消さなければいけない。
それに、あの人もずっとあのままだ。
…今のままだと、阿部は後者を取るだろう。

わかっている。普通に考えて、どちらがいい選択かと言われれば、間違いなく後者だ。
バグである、バグになってしまった「彼」を消して、この世界を守り続ける事。
頭ではわかっている。

でも、誰にも消えてほしくないのだ。
それでも、現実も仮想空間も非情で、その選択肢は取らせてくれないみたいだった。
それなら、こんな現状、見ていられない現状を消して、全部消し去って、みんなみんな痛い終わり方なら、赦してくれるんじゃないか、って。

松村「ごめん、樹…」
Juri「…俺は、あの人を助けたいよ」
松村「ごめん、…ごめんなさい…」
泣き顔のまま、それでも弟を慰める兄かのように振舞う彼は、優しく頭を撫でた。
パチリ、とまた何かが微かに弾くような音がして、やっぱりあのバグに接触していたのだと内心で感じ取る。