[Elext City] Ⅱ (ページ38)

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ドームの中でまるで胎児の様に丸まって眠る「あの子」の身体には、大量のコードが繋がれていた。
メインサーバー、そんな事は見ればすぐにわかる。
こんなにもリアルに近いバーチャル世界を享受出来るサーバーを、あんな小さい会社が作り上げられる訳がない。
それじゃあ、どうしたか。答えは簡単だ。

人の脳は10％しか使われていない。
ひっくり返せば、残り90％を活用できれば、それはとても素晴らしいものになる。

セキュリティを破壊して、彼の圧縮された「人間である証拠」を解放していく。
難解なプログラムだけど、見覚えがあった。これは阿部の作ったプログラムだ。
…本当、優秀な後輩だったな。俺、あべちゃんの事、後輩だけど尊敬してたんだよ。

s@ku《…悲しいなぁ、》
もう人間ですらない自分がこう思ってしまうのも、きっときっと自分がバグと呼ばれるものになってしまっているからだ。
…俺は、自分の事バグなんかじゃないって思っていたいけど。
s@ku《ユーザーネーム、お揃いの@、変わってなかったのに》
もうあべちゃんからしたら、俺は不必要な、消してしまいたいバグなんだね。
でもね、あべちゃん、俺だって大事な大事な幼馴染みを、きょもを、こんな風にされたら、黙ってられないんだよ。

セキュリティを破壊して、突破して、やっと見つけた「それ」を開く。
「……――、」
微かに動いたような気のする体に触れ、人型は、s@kuは、幼馴染みに優しく声をかけた。

《Wake up,"bro,"(「おはよう、きょも」)》

その桃色がかった乳白色のドームの中で、「偶像様(メインサーバー)」は、ゆっくりと、その目を開いた。
鮮やかなピンク色をした瞳が揺れ、「破壊者(致命的バグ)」の姿を映し出していた。