＊ ページ33
《…どういうつもり？》
《え？いや頑張ってるなぁって》
人気の少ない路地裏で、ある青年2人が話をしていた。
1人は酷く苛立った様子だが、もう1人は意に介す事無くヘラりと笑う。
《お前結局何が目的なの》
《特には。そうだなぁ、ただ、この世界がとっても面白いなぁって思っている、ただの1ユーザーだよ》
《その割には何であんな真似したの、あの子に変な事教えないで》
《変な事かなぁ、とても面白くなるスパイスだと思うんだけど》
《…お前、》
《そんな怖い顔しないでよ。協力関係結んでる仲じゃない》
《今それを裏切ろうとしているのはどっち》
《別にあの子に下手な事吹き込まない、って結んだわけじゃない》
《これでもし「彼」に気付いたらどうしてくれるつもりなの？》
《そしたらそれで面白いんじゃない。…あの子がどう動くか、けれどあの子の独断でこの世界の行く末が決まる訳じゃないじゃんか》
《お前さ…》
《あぁそうだ、結局「あれ」は捕まえられたの？》
《…》
《捕まえられてないんだ、折角場所を教えてやったのに》
《駄目だったね、俺じゃすぐに気付いて逃げられる》
《あぁそっか。…ふぅん、》
《何その顔》
《じゃあ俺が手伝ってあげるよ》
《…》
《別に俺が捕まえる訳じゃない、俺はステージを用意するだけ。捕まえるのは君だよ》
《…怪しいな、上手い話には必ず裏がある》
《確かにそれは一理ある。でも残念ながら、この話に裏はない。種も仕掛けもございません、ほら！》
ひらりひらりと手を動かす男は、もう1人の男の冷たい視線にクスリと笑った。
《さて、どうする？》
《…わかったよ、一旦は乗ってやる。だけど下手な真似したら…どうなるかわかってるよね？》
《そりゃ勿論。俺だってそこまで馬鹿じゃないよ》
じゃ、交渉成立って事で、と言って男はまたどこかへとフラフラ歩き出した。
残された青年は1つ溜息をつくと、そのままメニュー画面を操作してログアウトしたのか、その場から姿を消した。
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作者名：湊都 | 作成日時：2020年10月4日 14時
