[Elext City] Ⅱ (ページ8)

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ラウール「向井さん、今、大丈夫ですか？」
向井「あ、ラウ！うん、どうしたん？」
クレーム対処やお問い合わせに関する文書を纏めていた向井に声をかけると、忙しいにも関わらず相も変わらず笑顔を浮かべて大きく手を振っていた。

ラウール「その…お問い合わせに関わる文章をまとめたものを頂きたくて…」
向井「システム開発部、えらい事になってるもんなぁ」
ラウール「Starlights社全体が今危機的な状況だって思ってます。だから僕も何かお役に立ちたいんですけど…」
向井「ラウはええ子やなぁ」
ちょっと待ってな、これ今印刷中やから、ここ座り？と応接スペースの場所に通されたラウールは、そのまま向井が入れてきてくれたコーヒーを啜る。

向井「…元気ないな」
ラウール「……阿部さんの事、怒らせちゃって」
向井「どしたん？」
ラウール「最近報告されている人型のバグを、見つけたのに取り逃がしちゃったんです。そしたら「もう情報は大丈夫だから」って言われちゃって…」
向井はラウールの話を聞きながら、「そっかぁ」と眉を下げる。

向井「…阿部さんは、この[Elext City]のDIVE機能を意地でも成功させようとしてはる人やからなぁ…」
ラウール「完成させるのが夢だった、って聞きました。…だから、怒られて当然ですよね」
向井「……[Elext City]の完成は、みんなの夢やったから」
ラウール「…過去形？」
向井「阿部さん、話してへんのや、ラウールに」
ラウール「え？」

向井「ラウール、気になれへんかった？何でこの会社、8年も新卒採用はおろか中途採用もしてへんかったの」
ラウール「まぁ、気にはなってましたけど…」
向井「…あんな、これ作ってる時に、ある事故があってん」
そういう切り出しで始まった「昔話」は、まだこの会社が「Starlights社」という名前になる前の、小さな会社だった時の話だと言う。