いーとみー外伝 (ページ43)

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９-④ ページ43

無事に我が令嬢を部屋まで送り届けると

「ねえ安田、今日何かあった？」

と言われる。

この子は…ほんまに、お嬢のくせして俺のことばっかり見て。

嬉しいやら、あっさりバレてしまう自分が情けないやら。

「何か…と、言いますと？」
「それを知りたいから聞いてるんでしょうが」
「別段何もございませんよ？」
「…何もございませんじゃないもん、何となく」

彼女は少し口を尖らせる。
しかしすぐに俺を真っ直ぐ見て。

「ねえ安田、安田は今まで、私のために色んなことをしてくれたじゃない？」
「仕事ですから」
「だとしてもよ
お金を払ってるのはパパだし…私だって、安田に何かお返ししたい」

だから、何でも言ってよ。
そう彼女は小さな声で続けた。

何でも言ってなんて
…何でもなんて言えるわけないやろ。
貴女が好きで好きで仕方ないなんて、言えたらどんなに楽なことか。

「…んー、今日、個人面談がありましてね」
「ふーん、でも安田は特に心配ないんじゃないの？頭良いし。髪の毛はちょっと言われそうだけど」
あはは、まるっと図星。
「まあ…でも、大学行ったらどうだって、勧められまして」

そう言うと、彼女ははっと息を飲む。

そして

「…やだ」
「へ？」
「やだやだやだ、大学なんて行かなくていいわよ安田
だって私、安田にずっとここに居て欲しいもん」

そして、俺の服の袖をキュッと握る。

「どこにも行かないでよ…好きなんだもん」

…ああ。
俺はきっと、ずっと。『求められたかった』。

『行かないで』
その言葉を言って欲しくてたまらなかった。

ほんまは自分から仕掛けて言わそうと思ってたけど、それより早くこの子が言ってしまった。