いーとみー外伝 (ページ29)

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６-⑥ ページ29

九月頃の、まだ暑い日。忘れもしない。

(今日も…！)

もはや恒例となりつつあるこの観察。
走って御屋敷と施設を行き来しているせいで足めっちゃ鍛えられた。

(…おった)
ニコニコと彼女の様子を眺める。

すると

クルっと。
突然彼女が振り返った。
あのツインテールを揺らして、クルっと。

門の隙間から覗く、気持ち悪い笑顔(？)を浮かべた俺。
わわわっ

どうすればええかも分からんくて、謎に左右をキョロキョロと見てから、ぺこっとお辞儀した。

わああ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
見てしまってごめんなさいいいい！

そう思いつつ顔を上げると
彼女はこっちを見てて

目が合うとニコッと笑った。

…存在を、認識、された？

「お嬢様、どうされました？」
「何でもないわよ！行くわよ丸山！」

そんな声を背中に俺は帰り道へと駆け出していた。

何今の。
何なんやろこれ。

めっっ…ちゃ、ド○○キした。

…でも、可愛かった、なぁ。

そのド○○キはなかなか治まらんくて

「○○くん今日いつにも増して食べるん遅いけどどうしてん」
「や…何でもないです」

帰ってからも上の空。ぽわぽわ。
浮かれたような気分のままベッドに入って目を瞑るけど、あの子の笑顔ばかりが思い出されてなかなか寝付けへんかった。

まあ、それから先、どんなに門から見つめても、彼女が俺の存在を認識することなんてなかったんやけど。