いーとみー外伝 (ページ35)

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７-⑤ ページ35

「安田！今日はありがとうね！すっごい楽しかった！」

繭華様は嬉しそうに笑いながら道の先を歩く。

「もお〜、そんなんええですから。ていうか歩いてる時こっち向かんの。ぶつかってまうで？」
「やあねえそんなヘマ…ひゃっ」

前から来たサラリーマンにぶつかられて繭華様の身体がよろける。
無意識のうちに動いて受け止めていた。

「あ、ありがと安田
すみませーん…」
「このくらい当たり前です」

俺が謝った方がええかと思っとったけど、すみませんって繭華様自分で謝った。

とても優しい子。

「…今日ね、安田と同じ世界に行ってみたかったの」
「…へぇ」
「へぇって何よへぇって
だって安田は、私の知らない世界沢山知ってるもん
ファーストフードだってそうだし」

や、ファーストフードは知らん方が異常やと思うで。←

でも、そうか。
同じ世界に行ってみたかった。

それはきっと、『もし俺らがお嬢様と執事やなかったら』というさっきの考えに近い。

「…安田と…好きな人と一緒なら、怖くないかなって」

好きな人。
知ってる。
繭華様は、好きとはあんまり言わないけど、それでも好意を真っ直ぐに伝える言動をしてくる。

応えたい。応えられるなら。でも。

「…ほんまの告白する時は、ポテト食うた後なんかにしたらあきませんよ？」

それを本気として受け取ったらあかん。
俺のこの胸の嬉しいを、好きを、彼女に伝えたらあかん。
それがこの関係に定められたルールやから。

やってこの関係性やなかったら、俺らは出逢えてへんかった。

唇を尖らせる彼女の顔がとても可愛くて、思わずその唇に人差し指で触れる。

「今日は帰りましょうね」

その日は不思議な夢を見た。
俺の中学の女子の制服を着た繭華様と俺が、並んでお弁当食べてる夢。

夢の中の俺らは、当たり前みたいに、楽しそうに笑い話しとった。