病める時も健やかなる時も(橙) (ページ7)

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咲子さんページ7

「咲子さん？」

思いきって話しかけてみた。
咲子さんはびくっとかたをふるわせる。

「どうしたの？」
「繭華様でございましたか
すみません、お恥ずかしいところを…」

聞けば咲子さん、お父様にお紅茶を持ってきたのはいいが、いかんせん新入りだからちゅうぼうに帰ろうとして道にまよってしまったらしい。

「ちゅうぼうはたしかこっち」
「ありがとうございます」

あ、でも
本人がいるんだし、聞いてみるのもいいかな。

「…丸山と仲いいの？」

そう言うと咲子さんは「ひえっ！？」とわかりやすくあわてて。

「いっいえ！仲がいいなんて！私にはおこがましいです！
丸山さんは、私がこういう仕事…あっ、使用人として働くこと…にまだ慣れないので、いろいろ教えてもらってて…
ほ、ほんとにそれだけです！後は何も！」

そうなのね…
でもね咲子さん、あなた顔真っ赤。

「も、もうこれでいいでしょうか…？ご勘弁を…」

まあでも、使用人をあまりいじめるのもかわいそうだ。

「丸山せいかく悪くない？大丈夫？」
「全然！ほんとに良くして頂いてて！
あっ、繭華様のこともよく聞いていますよ！」
「どーーーせグチでしょ？」
「いえ！
あの子はちゃんと育ててやれば、きっと世界一いいお嬢様になるって、いつもそれはそれは嬉しそうに！」

へぇ…丸山そんなこと言ってたの。
後で問いつめよ。

「それならいいけど…
あ、ほら、ちゅうぼう見えてきたでしょ」
「あっ、はい！
すみません、お嬢様のお手間を取らせるような真似を…」
「こういう時はしゃざいじゃなくてお礼を言うものよ。そうでなくてはうちの使用人はつとまらないわ」
「！ありがとうございます…！」

よかった。咲子さんいい人そう。
私が一番知りたかったのはそれだったのかもしれない。

私は9才。
まだこいなんてしてないけど。
少女マンガはいっぱい読んでる。

こいをする人の顔はわかる。
丸山も、咲子さんも、同じこいの顔をしてた。

私は何だかうれしくなって、さいごに咲子さんに一ついじわるを言った。

「咲子さん！丸山とうまくやんなさいよ！」
「はい！…え！？」

はー、おもしろい。