病める時も健やかなる時も(橙) (ページ5)

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運命の目撃者２ページ5

「きゃっ！」

ﾊﾟﾘｰﾝ

「あっ、失礼！」

丸山がメイドのだれかとぶつかったらしい。何やってんのよ。

そしてその下ではカップがわれている。
ああ…私のお紅茶が…
当人たちはあたふたしている。

「ま、誠に申し訳ございません！ぼーっとしてまして…」
「いえ、僕の方こそ。お怪我は…」

二人の目がはじめて合った。
言葉がと切れて、ハッとした顔で見つめ合う二人。

(ん、んん？何このふいんき)

まるで二人の間だけスローモーションになっているような。
二人の向こうがわで、赤い糸がからまるのが見えるような…

ややあって、二人はわれに返る。
ポケットからチーフを取り出して丸山がカップのかけらを拾いながら話しだした。

「…神宮寺繭華様付き執事の、丸山と申します
新入りさん？」

うっわ、丸山がやさしい。キモチワルイ。←

「あっ…はっ、はい！昨日より働かせてもらうことになりました、山野井咲子と申します！よろしくお願いします！」
「ええよ、そんな固ならんでも
とりあえずお紅茶入れ直したげて？」
「あっ、はっ、はい！」

咲子さんと言った女の人がおぼんを持って立ち去ろうとする。

「あ、ちょお待って」

それを丸山が呼び止めた。
え、何言う気……？

丸山は咲子さんに近づくと…

「わっ」

咲子さんの手を取り、おぼんをその上に乗せた。
ふだん他のメイドがやってる正しい持ち方になるように。

「こうやって持った方がええよ、次は気いつけて」
「は、はい…」

二人のきょりが近い。
咲子さんの顔真っ赤だ。
いや、

「…こういう仕事慣れてないんや？」
「は、はい…始めたばっかりで」
「あー、な…何かあったら相談乗るで？」
「えっ、あっ、ありがとうございます」

丸山の顔も赤い。
そのまま咲子さんはちゅうぼうへ。
丸山は私の元へ。

「少しお紅茶遅れますけど、気にせんといてあげてくださいね」
「…うん」

丸山の顔が少しゆるんでいる。
それを私はふしぎな気持ちで見ていたのだった。