病める時も健やかなる時も(橙) (ページ15)

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告白ページ15

咲子さんはそっとうなずいて、少しずつ話しだした。

「…私の家は、母子家庭だったせいかあまり裕福じゃありませんでした
母は女手一つで私と妹を育ててくれて

でもね、ある日、いいことがあったんです
妹が見初められて、結婚したんですよ、それも…若くして会社経営者」

その方のお父上から社長のイスをゆずってもらったばかりの若社長。だったらしい。
それでもけっこう有名な会社だからそれなりにもうけがある。
ま、パパの手にかかればちょちょいのちょいでしょうけど。

「でも、幸せはすぐ終わりました
会社が軌道に乗らなくなって、吸収合併される話が出たんです」

え…
ドクンとしんぞうが動く。
だって、今さっき思ってしまった、多分それが真実なのだろう。

そう、『パパの手にかかれば』という、その言葉。

「…その相手が、神宮寺グループやったと」
「…はい」
「…でも、ここの内情を調べたかて、吸収合併の話はなくならんのとちゃいますか？
調べてもらったんなら分かると思いますけど、ご主人は清廉潔白、不正のひとつもない。

それに合併の話は、義弟さんの会社が危うくなったから出てきた訳ですし
そちらを改善するのが先では」
「わかってます！
ただ、私は会社の指示で動いていたわけではありません！」

え？どういうこと？

「…義弟が神宮寺グループの内情を知りたがっていたことは事実です
ただこれは、私が義弟に志願したことです

義弟も私もダメ元というか…不正が見つかったらラッキーくらいの気持ちでしたし
ある程度調べて不正があるかないか分かれば…辞めるつもりでした」

え、ちょっと待って
でもパパはせいれんけっぱくだったなら
どうしてまだ咲子さんはいるの？
って、私が聞くことじゃないか…
「…そっか、なら辞職という形でもええけど…
でも、ある程度調べたんやったら、なんですぐ辞めへんかった？
こうやってバレるリスクも高なるのに」
…丸山たまにはやるじゃない。

「丸山さんに…隆平さんに、会いたかったからです」

その言葉に、私も、きっと丸山も息をのんだ。

「ご主人の情報を流していた女の言うことなんか、信用できないでしょうが…
私が、隆平さんを好きなのは、本当です」

咲子さんの声はたよりなくふるえていた。