20. 午前4時過ぎの千円札 ページ29
背中の痛みと普段の目覚めとは異なる景色や感触に、忘年会から寝落ちてオフィスに泊まってしまった事を自覚する。
辺りを見渡すと、意外とオフィスの床で眠っている奴らが多く...伊沢、川上、吉田くんに...それからソファを陣取っているのは恐らく須貝さん。
流石に山盛、志賀くん、林、こうちゃん、乾等は帰宅したようで居る気配が無い。
そこそこの人口密度で寝落ちしてる者が多数居るにも関わらず、室内は空き缶や空き瓶が見当たらない。
よく見れば、テーブルに広がっていた紙皿や割り箸も撤去され元通りの綺麗なテーブルへと姿を戻していた。
時間を確認しようと、眼鏡を探しポケットに入れたままのスマホをタップする。
「あ、Aちゃん...流石に帰ったか。」
時間を確認しようとした矢先、ポップアップには後輩であるAちゃんからのメッセージが来ているようであった。
彼女は相変わらず丁寧な事に、先に帰宅して申し訳ないと一文。そして年末に向けた挨拶らしき一言が添えてあった。
彼女からのメッセージに既読をつけようか迷っていた矢先、別室から音がして扉が開かれる。
現れたのは河村だった。
「福良起きた?」
「うん、ついさっき。河村も寝落ち?」
「あーうん。まぁ...俺、コンビニ行ってくるけど福良なにか必要?」
「んーー、、インスタントの味噌汁買ってきて。野菜入ってないやつね。あさりとか」
「へいへい。あ、そうだ。因みにだけどさ...」
コートを着てマフラーを巻き、財布をポケットに仕舞う河村に目線を合わせる。
「因みに?」
「片付けたのほぼ、Aさんだよ。」
「え、、マジで?」
「片付けして終電で帰ったよ、彼女。」
「1人で帰ったの?」
「いや、駅まで俺が送ったけど...流石にこんな年末とはいえ終電間際の時間帯に女の子1人は危ないでしょ。」
「ありがとう河村。」
「お礼はハーゲンダッツでいいよ。」
「俺の財布渡せばいいの?」
冗談のつもりが河村から右手を差し出された為、近くに置いてあった鞄から千円札を1枚抜いて渡す。
「お、マジで出てきたやん。」
「冗談だったのなら返して?」
「コレハ、ボクのモノ、ダヨ。」
「片言すぎない?」
俺の千円を満足げに握りしめ、チラッと腕時計で時間を確認した河村は、急ぎ足気味にオフィスを出て玄関へと向かった。
「そっか、あの時間帯か。」
河村が帰ってきたら起こして貰おう。そう考えた俺は一言河村へメッセージを送り、撮影部屋のソファに眠りへ向かうのであった。
397人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
【作者協力型デスゲ企画】 こちら!悪女滅殺委員会です!
脱出劇の幕開けを告げる、スポットライト【選考型募集企画】【二次募集終了】
【事前告知】 『こちら、悪女滅殺委員会です』
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るん子 | 作成日時:2020年7月25日 14時