13-2 藍色の暖かさ ページ21
声の似た人なんてゴマンと存在するのだが、割と最近聞いた事があるような声だと感じた。
声のする方向へ顔を上げると、数名の女性。彼女たちは赤、青、紫色の衣装と思われる服装を纏っていた。
上着は着ているとはいえ、閉められているわけでもなくマフラーもしていない。
そんな女性たちの横を通過しようとした時、たまたま紫衣装の女性と目が合った。
「れいんぼーぱれっと！です！よろしくお願いします！」
白い息を吐く彼女からビラを差し出される。
普段なら受け取らないのだが、直前に目が合ってしまったこともあり何となく受け取る。
まぁ彼女たちが一枚でも早く捌き切れば、この寒々しい格好でのビラ配りを終えられると感じ、微力だが力になる。
「ありがとうございます！クリスマスもライブしてるので良かったら遊びに来てくださいね！」
笑顔で話す女性と、貰ったビラを凝視する俺。
「Aさん、？」
「もしかしてAの知り合いですか？A〜」
貰ったビラには最近知り合った...なんなら今日も数時間前まで顔を合わせていたAさんと思われる女性がプリントされていたのだ。
そしてあくまでも思われる女性だったのだが、ビラをくれた女性は間違いなくAさんの下の名前を唱えた。
「モモコなに〜？って、、え？」
「、、こんばんは、Aさん。」
「、、、こっこんばんは...河村さん。」
和かに笑っていた彼女から笑みが消え、驚き一色の表情へと変化する。
「僕も驚いてます。ひとまず、ビラ配り頑張って下さいね。また明日。」
「あっありがとうございます...また明日オフィスで。」
彼女の表情からどうやら俺は知ってはいけない事を知ってしまったと悟る。
もしかしてだが、伊沢や福良のいうAさんから感じる壁の正体なのではないだろうか...
「あ、河村さん！これ良かったらどうぞ。」
彼女たちから離れ、駅へ向かおうと再度歩き始めるとAさんから呼び止められ振り返る。Aさんは小走りで近寄り、俺にカイロを手渡してきた。
「マフラーもせずに寒そうなので。使いかけで申し訳ないけど使ってください！」
「君の分は？」
「私はもうビラ終えますし、すぐそこに事務所あるので大丈夫です。だから使って下さい。」
「、、じゃあ遠慮なく。ありがとう。」
「いえ、ではまた。」
最後に普段通りの笑みを浮かべ元の位置へ駆け足で戻るAさん。
彼女から受け取ったカイロは充分なほどに温かく買い出しへのご褒美に感じた。
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作者名：るん子 | 作成日時：2020年7月25日 14時
