紅鮭【QK】 (ページ8)

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side: F

早朝の執務室。
取り急ぎの動画の編集が重なり必死にテロップを入れる。

執務室には俺1人、
聞こえるのは一定のキーボードを叩く音のみ。
あと少しでキリが良い。

あと少しだ。

「あれ、福良まだ起きてたの？」

突然、扉が開かれる。

「急ぎの案件が立て込んでてね。河村起きるの早くない？」

別室のソファで寝ていたはずの河村が、髪をとかし身嗜みを整えながらやってきた。
寝起きで軽く整えるの範囲を超え、まるで今から外出するのかと思えるほど彼は丁寧に髪をとかしている。

「僕ちょっと出るけど、福良欲しいものとかある？」
「え、あぁ、コンビニ？」
「そうコンビニ。で、ある？特に無いのなら構わないよ。」

「特に無い...かな、大丈夫ありがとう。」

そういえば、最近この時間に決まってコンビニに行く河村の姿を見るのは三度目だ。
今まで早朝からコンビニに行くなんて滅多に無かったのに。

何か別の目的でもあるのか...

「コンビニ行くだけなのにそんなに整えるの？」

ためしに聞いてみる。

「そうだね...コンビニ行くだけ。だけど整えるかな。いつ誰に遭遇するか、いつ会えるかわからないからね。」

会える...か？

「え、視聴者さん？」
「それもまぁ...含むかな。

おっともうこんな時間、間に合わなくなる。
じゃあ少し出てくるね。早く編集終えて仮眠でも取ってくれよ。」

含み笑いをしながら、彼はそう言って執務室の扉を閉めた。

帰ってきた時に起きていられたら聞いてみるとしよう。

そう決心して、再度パソコン画面と向き合う。
もう30分もかからずに終わりそうだ。

次気付いた時には、とっくに河村はオフィスに帰宅していたがそそくさとまた仮眠をとりに戻ってしまったらしい。

「気になるな...まぁまた今度かな。」

バックアップを取り、パソコンの画面を落とす。
こうして長い長い1日を終えた。