紅鮭【QK】 (ページ28)

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「Aさん、お待たせ。」
「いえ、全然です。」

講義後スマホを確認すると山本さんから返信があり待ち合わせする事になった。
アルバイト以外他にこれといった予定も無い私と、Q uizknockで恐らく忙しいであろう山本さんではスケジュールが雲泥の差だ。
そうにも関わらず、コンタクトを取ったと当日にまさかこうして時間を割いて貰えるとはなんて奇跡なのだろうと感じる。

「じゃあどこか入ろうか。」

夕方過ぎ、夕食を摂るには少し早い時間なので大学付近の喫茶店に入ることになった。
店内は時間帯もあってか意外と混雑していたが待つ事も無く席に着け、早々に注文を終える。

　

「あの山本さん、避けてすいませんでした。」
「やっぱり避けられてたんだね。まぁ流石に何度か逃げられたからわかってはいたんだけど...どうしてなの？」

やはり避けていた事は山本さんにバレていた。
そりゃあんなにも露骨に避けたり逃げたりしたんだ、当たり前である。

「私Q uizknockが有名な会社だと知りませんでした。
つい先日webもyo utubeも拝見して、山本さんも河村さんも活躍されていて凄いな方なんだなって。」
「それほどでもないよ。」
「ファンの方のコメントも見たんです。色々と考えていたらファンの方に申し訳ないなと思いました...」

お互い言葉数が少なく重い空気の中、聴こえるのは周りの話し声。

そしてグラスの中の氷がからりと音を立てて動く。

　
　
　