紅鮭【QK】 (ページ20)

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#8-3 ページ20

　
　
　
時刻はまもなく20時半。
カワムラさんが来店して30分ほど経過した頃だろうか

「なんだか今日はカワムラさんのこと改めて知ることが出来た気がします。」
「僕もです。今はあいすさんとはいえ貴女のこと少しは知ることが出来たように思えます。
今日は来て良かった。」

店は1セット辺り40分。
流石に延長は取らずに帰したいと思っていたが、カワムラさんの様子を伺う限り帰るようであった。

よかった...

「実はこの後、会社の飲み会でして。
その前に立ち寄ったので延長したいのは山々ですが...」
「ぜひ楽しんできて下さいね。
延長はお気持ちだけで充分ですよ。」

本当に気持ちだけで充分だ。
むしろ延長されては正直困る...口には出さないが。

「今日は朝までですか？」
「いえ、今日は早上がりなので日付変わる頃までです。」
「そうなのですね...じゃあお迎えにあがりますね。」
「え？いやいや大丈夫です。むしろ見られたらマズいので。」

「あぁそれもそうですね、
ではいつものコンビニで待ってます。いかがですか？」
「何時になるかわかりませんし...万が一、延びる事も可能性としてはありますし。」

「きっと大丈夫です。
じゃあ24時半頃待ってますね。
それとチェックで。」

にこやかな笑みを浮かべ、伝票を持ち席から立つカワムラさん。
少し強かな笑みと読み取れるその表情のまま颯爽と会計へ向かう。

駄目だ、きっともう伝わらないだろう。

「今日はご来店ありがとうございます、またぜひ...いえお気をつけてお帰り下さいね。」

相手はカワムラさんなのでリピートは狙わない。
むしろこんな心臓に悪いことはないので、出来ればもう来ないで頂きたい。

「また来ますね。」

読まれたのか、
ニヤニヤに近い笑い方でエレベーターに乗る。

「ご勘弁を。」

お得意の愛想笑いで返しておいた。

　

　
　
　
　
　