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「……結局、同じ穴の狢だった訳か」
「何の話ですか?」
「繰り返す歴史はもう懲り懲りよねって話よ。ねー、いっちゃん」
平和とは争いと争いの間に生まれる束の間の休息。それが幾つも折り重なった物が歴史である。
一年前に刻まれたのは負の歴史。生み落としたのは紛れも無い異常性を持った子供の彼等。そして、その異常性を正しき方向へ導くのは大人になった彼等の役目であり、義務だ。
(僕は、放棄してしまったなぁ……)
本来ならば斎槻も将来を担う子供達を導く一員として彼等と共にある筈だった。しかし、それは彼の利己的な願いの下で破棄された。自分が誰かを正しく導けるとは到底思えないし、何より彼自身がそれを許せなかったのだ。旧世界の罪人と称する自分は居て良い存在では無いと自覚していたからこそ、彼は独り遠い何処かへと消えていった。
だが、後悔が無いかと言われれば、嘘になる。
(もう少し、一緒に居ても良かったかも知れないな)
柄にも無くそう思って、彼は頭を振った。起こしてしまった事象はやり直せない。それに、彼等は自分が居なくてもちゃんとやっていけると確信している。彼は自分の所属していた組織の隊員の誰も信用はしてなかったが、信頼はしていたのだ。こう見えて彼がお節介焼きなのを、果たして隊員の何人ぐらいが知っていただろうか。少なくとも、目の前で優しく微笑む長身の彼には知っている事だった。
斎槻はナイフで一口大に切ったステーキを口に運びながら、思い立った様に発言する。
「……それはそうと、君達はこの一年間どうだった? 地獄で笑い話にするから教えてよ」
カチリ。カトラリーが打つかる音が部屋に大きく響いた。
歩みを止めた斎槻と違い、瑠璃歌と叶愛は其々の道を歩んでいた。勿論、他の隊員達も同様だ。
瑠璃歌は未だアイドル活動を行なっており、つい最近はその発信力を活かしラジオ番組を週一日程度行なっている。ラビッシュには留まり続けているものの、今後の活動次第では離脱する事も考えているらしい。それまで隊員達に恩返し出来る様、精一杯尽くす所存だと言う。
叶愛は再びカフェバーを復活させるべくレブルから離脱、現在は有志達と共に壊滅区の復興に勤しんでいる。斎槻から貰った遺産の一部を切り崩しながらの生活ではあるものの、それなりに順風満帆だと満足げに笑う。後数年もすればカフェバーだけは何とか立て直せるかも知れないと、嬉しそうに語る彼は本当にあの場所が好きだったのだろう。
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十二月三十一日(プロフ) - ドットコムさん» 二人がどの様な話をしているかはご想像にお任せします。いつか右京さんが少しでも救われる日が来る事を願っております。此方こそ有難う御座いました。 (2020年6月12日 1時) (レス) id: b1d15496af (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - ドットコムさん» お久しぶりです。本作をご覧頂きまして有難う御座います。あれから二年、斎槻も居なくなって二年、結構な月日が経ちましたね。今回も懲りずに名前をお借り致しました。話題にあげたかったのですが、どうするか悩んで結局曖昧な感じにしてしまいました。 (2020年6月12日 1時) (レス) id: b1d15496af (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 松宮カナメさん» 同年で且つ組織内最年長だったのもあってあげさせて頂きました。何とか浅葱さんの結婚について突っ込ませたかったので、懲りずに名前をお借りしました。此方こそ、有難う御座いました。 (2020年6月12日 1時) (レス) id: b1d15496af (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 松宮カナメさん» お久しぶりです。本作をご覧頂きまして有難う御座います。あれから二年も経つのですね。書いている最中も干渉に浸っておりました。名前の順については一応レブル縛り、リロードにいる事を前提にあげてますが、何となくミルクさんの次は浅葱さん辺りだろうなと。 (2020年6月12日 0時) (レス) id: b1d15496af (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - お久しぶりです。淋の親です。更新内容拝見しました。うるうるきてます。いつもありがとうございます。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 3561a5869c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年7月12日 2時