シャングリラに綴る戯曲【掃き溜めの星】

◆小話:1st Anniversary!! ページ5

※掃き溜めの星一周年記念小説
※知っている様で知らない場所で、ウチの子三人が懐古するだけの話

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「……これは何の祝い事なんだい」

　異様な雰囲気の空間を見て、斎槻は誰に問うでもなくポツリと呟いた。
　アンティークで暖かみのある室内は幼稚で華やかな装飾がされ、部屋のど真ん中に置かれたテーブルには沢山の食事が並べられている。席は三つ分、王冠型に折られたナプキンが皿の上にちょこんと収まり、その左右を様々なカトラリーが一列に並べられている。
　此処は彼の部下が営むカフェバー「On n'a qu'une vie」。一時の癒しと安らぎを願って名付けられたその店内は、まるで誰かの誕生日を祝うかの様にゴチャゴチャにコーディネートされ、とてもじゃないが癒されも安らげそうにもない。又、異様であるのはそれだけではない。
　賑やかな店内に反し、窓やテラスの向こう側を覗くと眩い限りの白が外を覆い尽くしていた。その眩さ故に外の景色が何処にも見当たらない。まるで霧だ。
　知っているのに知らない場所。その異質さに困惑しながら斎槻は店内をぐるりと一周し、何か他に不審な点が無いか調べた。しかし、可笑しい場所は店内の装飾と席の配置、外の奇妙な光景以外には見当たらない。
(……と言うか、僕はどうして此処に居るんだろう)

「あー!!」

　机の裏を確認していた所、背後からの大声に斎槻は身体をびくりと揺らした。咄嗟に振り返ると、カウンターの側で手を前にクロスさせて防御体勢を取る少女の姿が目に映る。
　まだ幼さの残る少女の顔は素朴な可愛らしさがあるものの、驚きが隠せない様子であんぐりと口を開けたその表情は非常に間抜けだ。幸いなのは、その少女にはそれはもう飽きる程見覚えがあった事だ。

「何故貴方が此処に……! 後、此処何処ですか!?」
「……それはコッチの台詞なんだよね、聖園さん」

　あっちもこっちもと忙しなく慌てる少女──聖園瑠璃歌を傍観しながら、斎槻は過去の出来事を思い出す。
　聖園瑠璃歌はかつて斎槻が在籍していたRebel Armyと敵対する組織──rubbish heapに所属していた人物で、何故か一方的に因縁付けて来た厄介な少女でもあった。現在はその誤解も解けている筈なのだが、やはり此処に来るまで色々あった所為か随分と苦手意識を持たれている様だ。
(良い加減慣れてくれても良いんだけどねぇ)
　相変わらず間抜けな体勢のまま挙動不審な動きをする少女に苦笑しながら、斎槻はカウンターから奥にあるキッチンを覗く。

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