その2 ページ32
「ノボリさん、クダリさんおはよう。
ノボリさんすみません。俺、寝相悪いみたいだ」
気分を悪くさせたらごめん、と他人に対する様に言う彼は、傍から見れば同じ家族相手なのに、異様に見えるだろう。しかし、それは仕方の無い事だった。
住まう地では無く、遠くの地方。兄弟の誰一人として、足を踏み入れたことの無い地で発見されたトマリは、名前以外記憶を失っていた。
何時のタイミングでまた記憶が消えたのか、保護されるまで己が何処で過ごしていたのかさえ分からない。目覚めた際、初めて目にした人の様にポケモンの姿に驚き、傍に寄り添っていた、手持ちの名前すら自信が無かったそうだ。
重度の記憶喪失。原因は、1つしか思い付かない。
彼、トマリは行方意不明になっていた。
切っ掛けは4年前。その日、ノボリが突如現れた空間の裂け目に呑まれそうになった際、トマリが庇ったのだ。
今でもノボリは鮮明に思い出す。普段だったら、想像もつかない程に力が込められた左手 。二人の立ち位置を入れ替えるように、投げ飛ばされ。尻餅をついたノボリ目に写ったのは、空間に出来たブラックホールの様なものに込まれていくトマリの姿。
ノボリが状況を理解した時には、既に間に合わなかった。
自身の安全が保証できないのにも関わらず
「良かった」
と呟き、兄であった時の穏やかな笑みを浮かべ消えた。
ノボリは何も出来なかった。
トマリが消えたホームは何事も無かったかの様に静かだった。
あの包み込む様な静寂が、ノボリの脳裏に何度も蘇るのだ。
[newpage]
キッサキシティの北側。限られた者しか立ち入ることのできないキッサキ宮殿へと続く道の入口に、シロナと付き添い人のオーバ、案内役であるスズナが立っていた。
暦は一月。一年中、雪が降る町の中で、最も寒さがピークと言って過言では無いこの年明け早々に三人が揃っているのは、シロナの尽きない好奇心から繰り出される言動によるものだった。
悴む手をコートのポケットで暖めながら、口元を覆うマフラーの中で、オーバは溜息と共に恨み言を吐きそうになったが、細い息が白く空に溶けていく。
始まりから、トマリの手持ちまでかなり変えました。
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アクエリ(プロフ) - いえいえ〜望む望まない構わず更新してくれただけでも嬉しかったです〜更新は作者さんの意向で大丈夫だと思いますし、嬉しいと思っていただけたなら良かったですw (2022年10月24日 19時) (
レス) @page33 id: dee40d5769 (このIDを非表示/違反報告)
やる気次第(プロフ) - アクエリさん» アクエリさんお久しぶりです。 望まれていた更新では無かったと思いますが、アクエリさんのように待っていたと言ってくださる方がいて本当に嬉しいです。ありがとうございます。 亀更新ですみません笑 (2022年10月24日 19時) (レス) @page31 id: 362602b926 (このIDを非表示/違反報告)
アクエリ(プロフ) - お久しぶりです、長らくこの作品を待ち遠しくしていましたー！更新ページを開いてみれば久しく見ていなかったタイトルが画面上に見えたのでとても嬉しくなりましたw更新おつかれさまです〜 (2022年10月24日 18時) (レス) @page32 id: dee40d5769 (このIDを非表示/違反報告)
やる気次第(プロフ) - アクエリさん» いつもありがとうございます。アクエリさんのコメントにいつも心救われております。ノリで描き始めたところがありちょくちょく自問自答をしているのですが、需要が有ると言っていただけると、とても救われる気分になります。ありがとうございます (2022年7月25日 12時) (レス) id: 362602b926 (このIDを非表示/違反報告)
アクエリ(プロフ) - そして相変わらず、小説大好きです。読み返していっつもニコニコしてます。更新お疲れ様です〜 (2022年7月23日 13時) (レス) id: 694583c89a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やる気次第 | 作成日時：2022年4月5日 12時
