参拾漆話 ページ22
ーA視点ー
一週間が経ち、処刑日となった。
処刑の時間は日没後。
そのギリギリまで私はこの牢屋にいなければならない。
恐怖、などはない。
緊張が走る。
『(兄さん…凛太郎…凛子…)』
私は母さんの肩身である羽織を握りしめた。
ー
ーー
ーーー
そして日没後。
ドクン…ドクン…ドクン…
心臓の音が牢屋に鳴り響くかと思う程大きく脈打つ。
それと同時に胸騒ぎが起こる。
恐らく、緊張しているのだろう。
もうすぐ兄さんが来る筈だ。
バタン!!
『…!兄さ…………ん…?』
龍之介「A…あぁっ…ぐあっ…!」
そこには血塗れになった兄さんの姿。
ギシッ
私は格子に飛びついた。
『兄さんっ!どうしたの…!誰にやられたの…?私はどうすればいいの!!逃げるって決めたじゃん!!』
兄さんはズルズルと体を動かし、私の近くまできた。
そして私の手を握った。
龍之介「ははっ…話し方が戻ってるな…いいか…一回しか言わない………よく聞いているんだぞ…」
『嫌だよ!兄さん!!死なないでよ!!誰にやられたの!?言ってよ、ねぇ!!』
兄さんは構わず告げる。
龍之介「ここに…鍵がある…なんとか自力で開けてくれ…外で…凛太郎と凛子が待ってる……お前と三人で逃げてくれ…早くしろよ…外には…ばけ…も、の………が…」
だんだん冷たくなる兄さんの手。
刹那、ズルッと兄さんの手は勿論、体も地面についた。
龍之介「…A…大好きだ…いつでも………母さんと…見守って…い、…る…」
そう言った兄さんは眼を閉じた。
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作者名:靉 | 作成日時:2020年10月25日 10時