case3.REO.S ページ8
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きっと君は知らないだろうね。
私がどれだけ君のことを好きなのか。
ここLDH本社、マネージャー部に配属されてから約半年が経った。
昔から誰かのお世話をするのが好きだったというのもおかしな話だけれど、人の役に立てる仕事に就きたくて、求人を探していた時にたまたま見つけた仕事がこれだった。
ダメ元で応募してみるとまさかのあっさりと内定を貰い、今はGENERATIONSのマネージャーとして日々奮闘している。
いざ入ってみるとマネージャーとは名ばかりのもので、言わば雑用係。
私が女のせいで舐められているのかと思っているのだけれど、先輩の坂下さんに愚痴を零せばそれほど信頼されてるんだよ。そこまで任せられるってすごい事だよ。なんて言われちゃって。
「Aー。水取って」
「はい、どうぞ。もうこれくらい自分で取りなよ」
「はいはい。分かりましたよ」
このグループ最年少、佐野玲於は私を一番雑用に使う。歳が同い年という事もあり、他のメンバーさん曰くとっても仲良しらしいが自覚はない。
「五十嵐さん。今日午後から何入ってる?」
「えっと、LDHTVとジェネ高の収録。それと片寄さん数原さんは雑誌取材が1件入ってます」
「了解、ありがとうございます」
にこっとスマイルを浮かべ、楽屋を出ていったのは片寄涼太くん。玲於くんも見習って欲しいと度々思う。
正直言って、世の女の子が羨むほどに私は恵まれた環境で働けているのだと思う。
こんなかっこいい人たちに囲まれて、いい先輩にも恵まれて。
だのに、私が一番思いを寄せるのは何故かこの男。
自分でもたまになぜ好きだったのかよくわからなくなる。
だけど、不意に見せる彼の笑顔だとか仕事に向き合う時の真剣な顔に度々ドキドキさせられるのだ。
「A、これ適当に返しといて」
「え?」
明日のスケジュールを確認している時に、玲於くんが突然話しかけてきたと思ったら、スマホをポイっと投げられ慌てて落とさないように受け取った。
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作者名:めいこ | 作成日時:2018年12月14日 22時