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それからバック裏に駆け込んで一人で泣いた。
何故だかわからなかったけれど、涙が止まりなかった。きっと反論出来ないことが悔しかったんだ。
すっかり泣き腫らしてパンパンに腫れた目で店長に謝りに行くともう帰りなと逆に心配されてしまった。
ドレスを脱ぎコートを羽織り、寒空の下に出るとお店の裏口のすぐ側に今市隆二がしゃがみ込んでいた。
「何してるの...風邪引くよ」
「さっきはごめん!言いすぎた。五十嵐さんの事なんにも知らないくせに出すぎたことばっか言った。」
「別に、いいよ。ほんとの事だし」
「だから、五十嵐さんのこともっと知りたいって思った。今から家行ってもいい?」
今市隆二の言葉は良くも悪くもストレートだった。
脈絡もない意味不明な言葉を不思議と突っぱねることが出来なかった。
そして、私がその時なぜ首を縦に振ってしまったのか。たまたま母が夜勤で家に居なかったからなのか。きっとそうに違いない。
家に来るなり今市隆二は物珍しそうな顔で私の部屋を見渡した。
「そんなに不思議かな、この部屋」
「あ、いや、ごめん。女の子の家に来ることあんまりないから」
「そうなの?意外だね。女の子取っかえ引っ変えしてそうなのに」
「いやいや、俺のイメージ悪すぎでしょ」
そう言って笑った今市君の笑顔に不覚にもきゅんとしてしまった。今日、彼が見せた初めての笑顔だった。
それからは極当たり前のように彼と寝た。
そういう行為はこれが初めてでもなかったし、寂しさを埋める為の対価だとそう思っていた。
けれど、彼だけは特別だった。
彼に抱かれながら、ポロポロと流れてくる涙。
彼は少しだけ驚いた後に優しく微笑んで私の涙を拭ってくれた。
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作者名:めいこ | 作成日時:2018年12月14日 22時