待ち伏せ ページ19
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その日の終業後。
営業部の前で待ち伏せ。
(言い方良くないけど)
だってこのまま終わらせるわけにはいかない。
少し待っていると、
出先から戻ってきた綾瀬さんの姿。
俺を一瞬だけ見て、
声をかけずに部屋に入っていこうとする。
「綾瀬さん」
思わず腕を掴んで引き止めてしまうと、
綾瀬さんの肩は、ビクッと揺れた。
「…話したい。」
「まだ仕事あるから」
「待ってます」
「困る。まだまだ時間かかるからはよ帰り」
「…待ってます」
綾瀬さんは小さくため息をついて
「勝手にして…」
と呟いた。
手の力を緩めると
すぐに腕を抜いて、小走りに去っていった。
それから、
営業部の人達が次々に帰っていくのに、
綾瀬さんはほんまに出てこなくて、
「わ、ほんまにおった」
と言うのは、横山くん。
「諦めて帰ったら？」
「諦めへん」
「まぁ程々にせえよ」
俺の肩をぽんっとたたいていく。
横山くんの後ろを歩く彼女さんには
「私、密かに応援してますからね…！」
とナゾに応援された。
…ほんまに出て来おへん。
定時が18時やから、もう3時間くらい。
21時を回った頃だった。
「綾瀬さん！」
ようやく出てきた綾瀬さんの隣には、
なぜか村上くん。
「一緒に帰りましょ！」
「ごめん。ヒナちゃんとご飯食べるから」
「いや、俺と、」
「まだ仕事の話あるし。ごめんね」
「綾瀬さ「おつかれ。行こ、ヒナちゃん」
俺の言葉を遮って
俺を振り切って歩いていく。
その後ろで村上くんは困った顔をしていた。
「…おつかれ、大倉」
「……おつかれさま」
村上くんは何度か
俺のことを振り返ってくれたけど
綾瀬さんは一度も俺を見ることはなかった。
ほんまに、あかんのとちゃう…？
なんてネガティブな感情に蝕まれそうだ…。
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作者名：はるまる | 作成日時：2019年6月5日 20時
