＊俺の癖 ページ13
.
- 丸山side -
「隆平？」
10月の最終土曜日。
懐かしい声に名前を呼ばれたのは
用事を済ませて駅に向かっていた時だった。
心臓がドクンと跳ねて
俺はゆっくり振り返る。
「…明日香さん」
明日香さんは俺が反応したことに喜んで
たたっと駆け寄ってきた。
明日香さんの年齢は俺よりひとつ上。
なのに子どもみたいな笑顔で笑うし
かと思えばものすごい色気で俺を翻弄させる。
今はどう切り出そうか考えている
少し困った顔。それすら色っぽかった。
「元気にしてた…？」
「うん。してるで」
「よかった…返事ないから」
「もう明日香さんと連絡することないんで」
「そんな、」
「言ったでしょ？」
強めに出ると、明日香さんは口を噤んだ。
少し瞳に涙が溜まる。
ほんま、ずるいよなぁ。この人は。
愛する旦那と、可愛い子どもがいるのに
俺をこんなにも誑かす。
「明日香さん、今幸せ？」
「え、」
「俺は幸せです。毎日楽しいです。明日香さんがいなくても俺、大丈夫なんやで？」
手が伸びかけたけど、咄嗟に引っ込める。
明日香さんの背は
頭を撫でるのにちょうどいい高さで
明日香さんの頭を撫でるのは
俺の癖になっていた。
「俺もう明日香さんと連絡するつもりも会うつもりもないから。」
「…でもご飯くらいいいじゃない？友だちとして、ね？」
「友だちやないもん、俺ら」
明日香さんはもう口を開かなくて
「さようなら。お幸せに」
俺は明日香さんを残し、
駅の階段を駆け上がった。
改札を抜け、
ちょうど来ていた電車に駆け込む。
やたらと息切れしていて、
きっとそれは今走ったことだけではないと悟る。
俺は明日香さんとはもう会うつもりはないし
連絡するつもりもない。連絡先も消した。
さようならも直接言った。
まだ心臓は気持ち悪いけど
頭はスッキリしていた。
明日香さんのあの頃と同じ甘い香りが鼻に纏うけど
俺はもう前に進む。
そう思いながら電車を降りると
見慣れた背中が視界に入った。
Aちゃんだ。
声をかけようとして、立ち止まる。
隣には知らない男の人。
そいつはキョロキョロ辺りを見渡したり
居酒屋を指さしたりしていて
Aちゃんはそれに反応して
ピンクに染まった頬をそいつに向けていた。
心臓が気持ち悪い。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まるり(プロフ) - ここまでの展開にドキドキさせられっぱなしです(><)！ 毎度毎度更新を楽しみにしています！いよいよ最終章の4の方も楽しみにしていますね！！ (2019年3月4日 23時) (
レス) id: c1b47e134b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - はじめまして！いつも更新心待ちにしています！やっと主人公ちゃん自分の気持ちに気づいたんですね！ここんとこ切なくて切なくて^^;この先が楽しみです。これからも頑張ってください！ (2019年3月4日 20時) (レス) id: 03c67c0832 (このIDを非表示/違反報告)
はるまる(プロフ) - しずくさん» こんにちは。いつもありがとうございます！タイトルに＊があるお話は丸山くんsideになります。丸山くん目線のお話として、少し時を遡っているのでダブってしまってはいます。 (2019年2月23日 20時) (レス) id: 74b7d9762d (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - 初めまして。いつも楽しみに読ませて頂いてます。丸山さんのお誕生日のくだり、前にも出てきてます。ダブって書いてしまったのでしょうか？確認お願いします。気づき次第こちらの投稿削除して頂いてかまいません。よろしくお願いします( ´∀｀) (2019年2月23日 10時) (レス) id: 298df3e651 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるまる | 作成日時：2019年2月17日 21時
