優しさ ページ47
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「ちゅーって…！」
「わかる？キスのことやで？」
「わかるよ！！！」
どんだけ私のことを馬鹿にしているのだろうか。
丸山くんは私の反応がツボのようで
クスクス笑い出した。
少し腹が立つ。
「ていうかちゅーなんてせえへんし。付き合ってもないのに」
「だからAちゃんはかたいねんて」
まだ少し笑っている丸山くんは
ふぅ、と息を吐いて落ち着かせてから、また口を開く。
「大倉くん、こないだちらっと見たけど結構かっこよかった。それこそ亮ちゃんとかと同じくらい」
「うん」
「多分経験も豊富やろ。出会ったその日に告白してくるくらいやし」
「…言ってた。高校の時結構遊んでたって」
「え、なにそれ。聞いてへん」
丸山くんはふっと真面目な顔になる。
「言ってなかった、かな。」
「聞いてない。遊んでたってどういうこと？Aちゃんも遊びなん？それやったら話が違う」
「高校の時やって。今は真面目に恋愛してるって、言ってたと思う」
「…どうだか」
丸山くんは途端に
大倉くんに対して敵対心が出てきたようで
少しイライラした顔をした。
「遊ばれてそうって思ったらちゃんと引く。大丈夫。」
「…なんか変やなって思ったらちゃんと言えよ？」
「はい…」
イライラしてるからかいつもより強気な言葉に
私は頷くしかできない。
でもそれは私が変な男に捕まらないように
っていう丸山くんの優しさであって
それは少し嬉しかった。
＿＿
＿
深夜3時、居酒屋の閉店と同時に外へ出た。
こんな時間に追い出されても
ちゃんと帰れるのは最寄りで飲む利点だ。
新聞配達のバイクが
私たちとすれ違っていく。
まだこんなに星が輝いている時間なのに
大変な仕事だと思う。
「あ〜〜、でも楽しかったわ！」
丸山くんは大きく伸びをする。
「よかった」
うん、と笑う丸山くんは
コートのポケットに手を入れた。
ほろ酔いの丸山くんは
ふわあっと小さく欠伸をした。
「Aちゃん、俺が元気ないから誘ってくれたんやろ？」
「別に…」
「ありがとね。元気出た」
「…ならよかった」
丸山くんは空を見上げて星を数える。
数えきれないほどの星が
空には輝いていた。
「明日香さんに会ってん」
「え？」
丸山くんは空を見上げながら小さく呟いた。
「あの日。バッタリ。」
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作者名：はるまる | 作成日時：2019年2月1日 8時
