レクチャー ページ41
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「ねぇ、映画見に行かない？」
丸山くんにそう言ったのは
その寂しそうな顔が気になったからで
元気づけるためってわけでもないけど
でもやっぱり気になるし
丸山くんには笑顔が似合うと思うから。
「え？」
丸山くんは怪訝そうに私を見る。
「こないだレイトショー行った時の予告でやってたやつ。もうすぐ公開やねんて、テレビでやってた。次あれな？って言ってたでしょ？」
「…そういうのその人と行ったら？」
「大倉くんとは別の見るし。あれは丸山くんと約束してたんやもん」
「…約束、してたね」
「そうやろ？」
「うん。いこっか」
私は強く頷いた。
丸山くんはふぅっとため息をついて
私の頭をわしゃわしゃっと撫でた。
それは女の子の頭を撫でるものじゃなく
どちらかと言ったら
大型犬を撫でるような、それで。
「もう…Aちゃんには叶わんわ」
と丸山くんは小さく呟いた。
「え？」
「いいの。なんでもない。楽しみにしてるな？」
そう言った丸山くんは
いつもの笑顔に戻っていて安心した。
「大倉くんっていうんや？」
「え、なんで」
「さっき口走ってた」
「わ…ほんまに…？」
「へぇ。大倉くんねぇ」
丸山くんはニヤッと笑う。
なんだか弱みを握られたようで少し焦る。
「俺がレクチャーしてあげよう」
「レクチャー？」
「デートのレクチャー。そんなしたことないやろ？」
「あるよ！！！」
亮に長い間片想いをしていたからと言って
私だって経験がないわけではないし
デートだって
手を繋いだりだって
もちろんしたことがあるし
そりゃ、
亮から卒業しなきゃと付き合った人たちのことを
本当に好きになれたわけではなくて
罪悪感からすぐに別れてしまったけれど
それを3回くらい繰り返してみたけれど
でもしたことはあるし。
でもそれも数える程しかない、か。
丸山くんをちらっと見ると
私を見てクスクス笑っていた。
ムッとして睨みつけると
堪えきれなくなったのか声を出して笑い始めた。
「しなくていいならいいけど」
「…」
「する？」
私はたくさん、たくさん、たくさん迷って
小さく頷いてしまった。
丸山くんはさらに笑った。
でも笑われたって、
聞いといた方が私のためな気がする。
「ほんまAちゃんかわいいわ」
笑いながら言う丸山くんに
私はグーパンチをおみまいした。
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作者名：はるまる | 作成日時：2019年2月1日 8時
