タイミング ページ40
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「なんかいいことあったんやろ？」
丸山くんにそう言われたのは
色々聞かせてやと連れていかれた屋上でのことだった。
私が別に？とはぐらかしても
丸山くんにはきっとバレている。
「…まず、亮が結婚することになりました」
「…あぁ、そう」
「プロポーズしたみたい」
「…泣かへんねや？」
「うん、なんやろ。ここまで来ると逆にスッキリしたかもしれない。」
「ちゃんと卒業できたんや？」
「うん」
空を見上げると、
三日月よりもっと細くなった月がそこにいた。
じっとしていると寒くて
上着の裾を引っ張る。
「それで？」
「それで、今日合コン行って、…さっきの人に告白された」
「えっ」
丸山くんは驚きの声を上げる。
そりゃそうだ。
私もびっくりした。
「今日出会った人やんな？」
「うん」
「展開はっや…」
でも…と丸山くんは私を見る。
「いいんちゃう？亮ちゃんからも卒業したわけやし。身長も高くてイケメンやったし」
「…と言われても、まだ何も知らないし。それに、最初の印象は苦手な人やったし」
「また？」
俺と一緒やん、と丸山くんは笑う。
「でもなんやろ。亮の時とは全然違うんだけど、でも、…わからんけど、もっと知りたいなって思う」
「…そっか」
「ついさっきまで亮のこと考えてたのに、わけわからんねんけど」
「それはもうしゃあないと思うわ」
「え？」
丸山くんは、
前にも言うたけどさ、と話を続ける。
「多分、そういうタイミングやねん。さっきの人と出会ってそんなふうに思うのは、そういうタイミングやったんやと思う。だからAちゃんは自分の気持ちに正直に動けばええねん。それが恋やろ？」
「恋、なん？」
「恋じゃないの？」
丸山くんは笑った。
恋、なのか。
恋…なのか？
「わかんない」
「まぁ知っていけばいいよ。これから、その人のこと」
「…うん」
そろそろ帰ろっか、
と丸山くんは立ち上がる。
その時ふと見えた顔がすごく寂しそうで
私は思わず丸山くんの手を握って引き止めた。
振り返った丸山くんは
びっくりした顔で私を見る。
「あ、ごめん」
慌てて手を離して、
「なんかあった？」
丸山くんに聞いた。
「…なんで？」
「なんか寂しそうな顔してるから」
でも丸山くんは
「…なーんもないで」
と笑った。
やっぱり寂しそうな顔で。
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作者名：はるまる | 作成日時：2019年2月1日 8時
