おめでとう ページ20
.
「なんか…傷ついたわ」
「なんでやねん！ていうかおめでとうの一言もないんかい！！！」
「…おめでとう」
心こもってないわ！と信五くんは怒ってるけど
傷ついたんだもん。
やっぱり亮と由紀ちゃんの間には
私の入る隙なんてなかったんだなぁって。
諦めるって言ってんのに
まだそんなことを言っている私は
ほんまに未練がましい。
プロポーズまでには
結婚式までには
ちゃんと卒業して
心からのおめでとうを言いたいのだ。
「帰ろ」
「残ってたのは俺に文句言うためだけかい」
「することないもん」
「制作準備は」
「…安田くんがしてくれました」
私と信五くんに見られた安田くんは
肩を竦めて笑った。ピースサイン付き。
信五くんは大げさにため息をつく。
「ヤス、苦労してるやろ」
「ちゃんと役割分担してるから大丈夫やで」
「ならええけど。甘やかしすぎたらあかんで？」
「はーい」
「はーい、じゃないよ、安田くん」
そんな話をしながら
私はコートを着てリュックをしょって
帰る準備が完了した。
「それじゃあ」
お疲れ様、と続けようとした時
信五くんのスマホが鳴った。
信五くんは画面を見ると急に
表情がふわっと柔らかくなった。
今まで見たことがない。
「もしもし？」
きっと彼女さん…いや、奥さんだろう。
信五くんは私の視線に気づき
さっさと帰れというように手で払う。
全く失礼だ。
「おつかれ」
小さく呟くと信五くんは手を上げるから
私も手を上げて、保育園を出た。
「一緒に帰ろ〜！」
「わ、安田くん」
保育園から少し歩いたところで
後ろから安田くんが追いかけてきた。
「信五くん、優しい顔してたね」
「彼女さんやろうなぁ」
「…結婚か〜〜」
今夜も蒸し暑い。
背中に汗が滲む。
「安田くん、勝負しよっか」
「ん？」
「どっちが先に結婚できるか」
「なんやそれ」
安田くんは笑う。
「負けへんで。…多分」
「多分なんや？」
「や、絶対！沙耶と合コンしよっかって話してん」
「へぇ。Aちゃんが合コン？」
「人見知りやから地獄だろうけど」
「そら地獄やな」
今夜の月は少し欠けていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるまる | 作成日時：2019年2月1日 8時
