５.レイズド ページ5
「それは災難だったな。行こう、アル。」
信じてもらえない場合は想定していたが、話も聞いてもらえない場合になるとは思ってもみなかった。どうにか引き止めようと必死にかける言葉を考える。
「あ、でも、兄さん。この人混乱してるみたいなのに、こんな所で放っていっても大丈夫かな？」
アルフォンスは気遣いが出来る子だ。
私たちが今いる所ははどこまでも続くような一本道で、道から逸れると左右に生えた草に飲み込まれてしまう。
「・・・そうだな…」
兄弟が纏うオーラにどこか違和感を覚えるのはなぜだろう。暗いというか、冷たいというか…
ーーー
「おや、エドワード君じゃないかい。」
エルリック兄弟に連れられ、私はレイズドという小さな町に入った。見たところ、この町はやけに子供が多い。
「こいつをここに置いてやって欲しいんだけど、ダメかな？」
そう言ってエドワードは親指で後ろにいた私をさした。
立ち話もなんだから ということで、私達はエドワードの知り合いらしき婦人の家にお邪魔した。
婦人が言うには、この町は戦争や紛争で親を亡くした子供や身寄りのない人を進んで受け入れるらしい。
彼女も過去に愛する夫を喪った。彼女の夫は軍人で、イシュヴァールで戦死したそうだ。
婦人の優しい笑顔は母親を彷彿とさせる。きっと、みんなのお母さんといった立場なのだろう。
私をレイズドに住まわせるというエドワードの願いはあっさり承諾された。
まさかとは思っていたが、やはりそうらしい。ここに置いて行かれるのだ…
マレーネは夕飯の支度で市場に行くというので、私は兄弟と一緒に留守番をすることになった。登場人物と出会い、絆を深める…そんな想像とは異なり、現実は甘くない。ピリピリとした、気まずい時間が流れる。
「優しい人ばかりだから、あんたでもやっていけるさ。」
ようやく声をかけてもらったと思えば、そう言われた。私がここで暮らしていけるなんて、それはない。やっていけないと思われる理由をあげていけばきりがないのだから。まず、この時代は不便だから。そして、日本人の顔立ちはどう考えてもこの国では浮いてる。
「おばさんはまだ戻ってないけど、汽車の時間だからオレたちは行く。伝えといてくれ。」
私はとっさにどこへ向かうのか尋ねた。特に意味は無いが、どうにか話を続けたいと思ったからだ。
「どこだっていいだろ、別に。」
私に背を向けたまま呟くようにそう言った。
「私、ここで暮らしていけるかな？」
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小松 翠(プロフ) - 白夜の幻想者さん» 作者としては、面白いのはここまでのように感じてしまうんですが…面白いと感じてもらえて良かったです！ 小さいのもエドの長所だと、私は思っていますよ…（笑） 小説の閲覧、そしてコメントをありがとうございます。とても励みになります。 (2017年7月23日 10時) (
レス) id: 1bf852082a (このIDを非表示/違反報告)
白夜の幻想者 - なんか、とっても深くておもしろかったです！真理も色々あるのかな？夢主ちゃん頑張れ！エドは意外といろんな面で小さいぞｗ小説頑張って下さい！ (2017年7月23日 10時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)
小松 翠(プロフ) - アザミとヒマワリさん» トリップなんてしたことはないので、本当にそうなるかは分かりませんが…他の夢小説では夢主がエドたちとすぐに打ち解けていたので「それなら私が逆を行ってやろう！」と思い、書かせていただきました（笑） この小説をお読みくださって、ありがとうございます。 (2017年7月23日 9時) (レス) id: 1bf852082a (このIDを非表示/違反報告)
アザミとヒマワリ - トリップの現実を知りました・・・。 (2017年7月23日 9時) (レス) id: 7f2420204c (このIDを非表示/違反報告)
小松 翠(プロフ) - もちもっちーさん» こんな作品を面白いと言ってくださる方がいらっしゃるなんて、感動です！ありがとうございます！ (2017年3月19日 22時) (レス) id: b7dab0506b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小松 翠 | 作成日時：2017年2月28日 0時
