トリップ 鋼の錬金術師へ

３０.事情２ ページ30

無言が続く室内。

「私は…エリクシーです。不法入国とか密入国とかで捕まったけど…」

ここから先の出来事は、話しても信じてもらえるか不明だ。

「私は突然、この国の上空に放り出されて…
そして、訳も分からずにそのまま地面に落ちて…
普通なら助からない高度から落ちたのですが、そこで、エルリック兄弟に助けられました。
そして、兄弟に連れられてセントラルに来るとマスタング大佐に刑務所行きにされ…
でも、私は無実です。」

私は無実。無実…だよね。
突然放り出されたら、罪もクソもないよね。

「空に放り出された、ね…だが、真理を見たんだろ？」

見たかったわけじゃない。

「俺は錬金術師じゃないから詳しい事は分からん。」
「だが、真理を見るほどの練成は法に触れる。」
「しかも、エドが言うには…人体練成、やったらしいな。」

私は黙るしかなかった。
そりゃあ、人体練成なんてする気はなかった。あれは、事故…
そう。

「違うんです、あれは！
あれは、たまたま物語の中で登場した陣を真似して描いて遊んでいただけなんです！
私の国は錬金術と縁の無い国で…そんな、私がそんな超高度の練成をできるわけが…！」

・・・でも、練成は発動したし…
どう説明すれば分かってもらえるんだろうな…
錬金術世界に来てから、ずっと厳しめだったから、また、信じてもらえないのだろう。

「そう、か…」

ほら。また、いや〜な雰囲気。せっかくのハガレンなのに。
真理のやつ、何が『せいぜい楽しめ』だ。楽しめやしないではないか。
楽しいのは、この状況をみて嫌な笑いを浮かべているであろう真理のみだ。

「まあ、エリクシーの事はまだマスタング大佐やその部下しか知らない。それと、刑務所に勤めてる奴と。
でもまあ、刑務所勤務の奴には黙っているように言っておいたから、もう逃げも隠れもしなくて良い。」

ああ、良かった。
そうか、大佐たちにしか私の存在は
知られていないのか。

「だが…」

・・・だが？
まだ何かあるというのか。

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