トリップ 鋼の錬金術師へ

２５.暴走 ページ25

偽物のグラン准将が現れた。
そしてキンブリーの脱走。
そう思えば床が崩落。
踏んだり蹴ったり、落っこちたり。
そして落っこちた先には地獄絵図だ。
アニメで見てる限りは、ひたすら興奮するばかりなのだが、目の前で起こるとなると嬉しいのか怖いのか、複雑だ。

私が知らぬ間にも、話はどんどん進んでゆく。

突然、紅い水の入った筒状の水槽が壊れた。
あの男がやっと、グリードのいた部屋から抜け出したのだろう。

「鋼の錬金術師！！」

この声は…

「弟を連れて行け！！」

「っざけんな！！」

「兄は弟を守ってやるものだろう！」

通称、傷の男 スカー。
後々判明する事だが、彼自身も弟であり、兄に死なれ…だから、残される者の気持ちをよく分かっているのだろう。

「アル！！」

そう叫んで、拘束されているアルフォンスの元へと向かった。
いや、向かおうとした。が、それは叶わなかった。
エドワードは、先ほど溢れ飛び散った紅い水の溜まりに片足を踏み入れてしまったのだ。
ラスト曰く、紛い物といえどこれだけの量があれば、術者の力は何倍にも増幅されるという。

エドワードは奇声をあげながらまばゆい水色の練成反応を放ち出す。そして、モーションも無くオートメイルを武器に錬成し、ホムンクルスたちに向けて発射した。ホムンクルス達の背後の壁に槍が突き刺さり崩壊し、さらに紅い水が溢れてくる。

周りの囚人たちは、すでに何処かへと逃げ出していた。
「混乱に乗じて逃げよう」とメリッサが私の腕を引く。私はあらかじめこうなることを分かってはいたが、目の前でそれを見ると恐怖で足が動かない。残っているのは逃げ遅れた者と、
私たちだけ。

苦しそうな呼吸を繰り返し、エドワードはホムンクルス達を睨みつける。

あの苦しそうなエドワードをどうにかしてやれないものか。今頃は軍が突入した頃か。
その中の一人、ロス少尉が到着するのももうすぐだろう。
エドワードを抱きしめてやるのはロス少尉の役目なのだ。ここはロス少尉に任せよう…
紅に照らされていた部屋がエドワードの放光で水色に染まっている

「エドワードさんっ！！」

強く響く女性の声。
ロス少尉だ。ロス少尉が到着したのだ。

「錬成反応が無限連鎖しておる…！」

何かを決心したかのように、
力強くロス少尉が歩き出した。

ロスの突然の行動に慌てるブロッシュ軍曹。
しかし、そんな声は彼女には聞こえない。
ただひたすら、あの子の元に進むだけ。どんなに反発が強かろうとも。

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