３.路地 ページ3
そこは、よくわからない街の路地。
扉はもう消えたようで、白のかけらも見えない。
「お前、何してるの？」
いつの間にかそばに寄ってきた少年が話しかけてきた。
「いや…知らないところに飛ばされて、どうしようかと思ってて…」
少年はいかにも怪しい奴を見る目でこちらを睨む。それも当然だ。日本で着用される洋服は、アメストリスで着用するにはどう考えても浮いているのだから。
しかし…実際、知らないところに飛ばされたので、他に言いようもない。「飛ばされた」などという言い方がいけなかったのだろうか。
「そう。服もボロっちいし…腹、減ってるんじゃない？」
私は無言でうつむき、目線を腹に向けた。
目線が腹に向いていることに気づけば、空腹を肯定していることになるだろう。
ロクなデマカセも出てこない口が嫌になる。適当な嘘もつけない脳みそを叱ってやりたい。
「これ、食べなよ。オレの母さんが作ったんだ…そりゃあ、味覚には個人差があるけど…美味いよ。」
そう言って少年が小袋から取り出したのは、
イビツな形をした飴のようなもの。それを数個。
こんな変な形で完成させるとは、相当不器用なのだろうな、彼の母親は。こんなに妙な形だと、まるで石のようだ。イチゴ味なのだろうか、鮮やかな赤。
「そんな、遠慮しますよ！貴方のお母さんは、私が食べるためにこれを作ったのではないんですから。」
「いいんだよ。作りすぎちゃってるんだ。母さん、不器用だから。」
こうまで言われると断りきれないのが私の性だ。昔から、頼みごとは断れない性格なのだ。そのせいで貧乏くじを引く場合も多々ある。
少年の手から飴のような物を食べると、少年は不敵な笑みを浮かべていた。ただし、飴にがっつくことに夢中だった私は、彼のその表情を視界に入れることができず、見逃していた。
しばらく飴を口内に含んでいて気が付いたのだが、さすがにこれは薄味どころじゃない、と内心ツッコんだ。
「これ、結構好みが分かれるんだけど。どうかな？」
どうかもなにも、この飴には味が無い。
美味しいと感じる要素が存在しないのだ。
だがまあ、ここはお世辞でも美味しいと言っておくべきだ。
少年に返答した瞬間、突然、街が消えてゆく…
全てが色を無くし、真っ白に…
「今のが代価だ。ほら、行ってこい。」
2度目の真理。扉の中から伸びてきた黒い手に
体の自由を奪われ、無理矢理扉に引きずり込まれた。身体に纏わりつく黒子はどれも奇怪な表情だ。気持ちが悪い…
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小松 翠(プロフ) - 白夜の幻想者さん» 作者としては、面白いのはここまでのように感じてしまうんですが…面白いと感じてもらえて良かったです！ 小さいのもエドの長所だと、私は思っていますよ…（笑） 小説の閲覧、そしてコメントをありがとうございます。とても励みになります。 (2017年7月23日 10時) (
レス) id: 1bf852082a (このIDを非表示/違反報告)
白夜の幻想者 - なんか、とっても深くておもしろかったです！真理も色々あるのかな？夢主ちゃん頑張れ！エドは意外といろんな面で小さいぞｗ小説頑張って下さい！ (2017年7月23日 10時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)
小松 翠(プロフ) - アザミとヒマワリさん» トリップなんてしたことはないので、本当にそうなるかは分かりませんが…他の夢小説では夢主がエドたちとすぐに打ち解けていたので「それなら私が逆を行ってやろう！」と思い、書かせていただきました（笑） この小説をお読みくださって、ありがとうございます。 (2017年7月23日 9時) (レス) id: 1bf852082a (このIDを非表示/違反報告)
アザミとヒマワリ - トリップの現実を知りました・・・。 (2017年7月23日 9時) (レス) id: 7f2420204c (このIDを非表示/違反報告)
小松 翠(プロフ) - もちもっちーさん» こんな作品を面白いと言ってくださる方がいらっしゃるなんて、感動です！ありがとうございます！ (2017年3月19日 22時) (レス) id: b7dab0506b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小松 翠 | 作成日時：2017年2月28日 0時
