鬼の子と呼ばれて嫌われるエースと、助けたいサボ ページ16
幼少期エースの精神的支柱は唯一の親友のサボだったりしたのかなという妄想がパーンした結果
ちょっと暗いお話です 細かい設定はガン無視でいきます
「……どうしてお前はそんな傷だらけなんだよ」
最悪だ。サボにばれる前に隠したかったのに。
「最近生傷が増えてるだろ。全部診せろ、手当てしてやっから」
ポンポンと傷口に消毒薬を塗りこむサボの顔を、俺は見ることができない。
右腕の処置を終えると、今度は左足を引っ張り上げられる。サボがようやく重い口を開いた。
「……やりかえさねぇのかよ」
「え？」
「お前なら大抵の奴は返り討ちにできんだろ。まさか今になって『鬼の」
「言わないでくれ」
俺が遮ると、サボは素直に黙った。
顔も知らない奴らに殴られるのは慣れている。昔からよくあった。
高校生になって、それが少しエスカレートし始めただけだ。
俺を殴る奴らは決まってこういう。
『鬼の子』
『生まれてきちゃいけなかった子』
『ゴミ』
「……安心するんだよ、殴られてる自分ってのに」
そこから、ポツリポツリと言葉を紡ぐ。
生産性のない行為が好きだ。しかるべき罰を受けている気分になって、安心する。
殴られるのは痛い。蹴られるのはもっと痛い。
それでも、俺はどこか安心している。
傷だらけになった惨めな自分に安堵する。
罰を受けないといけない。
「俺は、生まれてきたことが罪だから」
「やめろよ」
今度はサボが遮る。いつになく鋭い声だった。
「罪とかいうんじゃねぇよ。それはお前が傷ついていい理由にはならねぇんだよ。俺が……俺がやなんだよ。お前は鬼の子なんかじゃな」
「鬼の子だよ。本当はお前のことだって辛いんだよ。俺といるせいでお前が汚れちまわないかって心配なんだよ」
「っなことあるわけねぇだろ!!」
サボが怒鳴った。処置されていた足に消毒液がぶしゃっとかけられる。
「いいか！！俺はお前に生きて幸せになってほしいと思ってる!!たとえ汚れようともエースと一緒なら泥水にだって飛び込んでやる!!なめんじゃねぇ!!」
殴らんばかりの勢いでまくし立てられる。
まっすぐな愛情が心に染みる。その高潔ささえ、受け入れることを忘れてしまいそうだ。
「お前が死んで、それでどうなる?!何もかわらねぇよ!!!だったら俺の隣で生きてくれよ!!そしたら……
何か変わるかもしれないだろッ!!」
落ちてきたサボの頭を受け止める。
泣いてるのか？と聞けば、泣いてないと返ってくる。
サボがいる限り、俺は生きていいかのような幻想に囚われる。
まだお前は俺を引き留める。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：piece OF cake | 作成日時：2020年12月5日 1時
