絶好調 ページ5
「ムニャ、もう食べられな……ンあ!?」
Aはガバ!と上体を起こす。いつの間にか寝ていたらしい。身体はホカホカと暖かく、脳がボーッとする。寝ぼけ眼を擦り、大きなあくびを1つ。何かすごい夢を見た気がする。
「ん?」
ベッドサイドに水の入ったグラスと置き手紙を見つけ、ここが自分の部屋では無い事に気がついた。加賀美の匂いがする、彼の自室らしい。手紙を開くと
『仕事に行ってきます。
体調悪くなったら連絡くださいね。加賀美
P.S.羽や尻尾が不便でしたらすぐ連絡を』
Aの体調を気遣った内容だった。フム、と思いながらグラスの水を飲み干す。
ハヤトは仕事に行ったらしい。そして俺は体調が悪かった。確かに最近腹ペコで…いや。今は違う。全く空腹感がない。てかこの羽や尻尾ってのは何の話だ。俺は羽の無いタイプの淫魔だぞ、失敬な。そんな事を考えながらググ、と伸びをすると腰の辺りに違和感を覚えた。なんだ?と思って見やる。
「えぁ!?」
なんと、そこには確かに一対の羽と尻尾が生えていたのだ。
どちらもとても小さく、生まれたてのようにパタパタと動いている。
Aは急いで洗面所へ向かう。転ぶようにして急停止し、大きな鏡越しにようやくその全貌を確認する事ができた。
羽はかなり小さく、15cmくらいだ。これじゃ到底空は飛べないだろう。ピンクの薄い膜が蝙蝠のように黒い骨格の間で突っ張っている。
慣れていないので自分の意思で動かす事はおろか、勝手に動くのを制御すら出来そうにない。
尻尾も同様、制御出来なさそうだ。黒く短いソレは、一丁前に矢尻のような、逆ハート型の先端を持っている。全長は20cmもないであろう、ピコピコと勝手に揺れるソレをAは情けないような気持ちで見つめた。
鏡に正面から向き直り、小さすぎて生活に支障はなさそうだと肩を落とす。どうせ生えてくるなら、デカくてかっこいい方がよかった…というか、なんで急に…
そこまで考えてAは確信する。
「やっぱ、夢じゃなかった…」
とっくに気づいては居たが、やり過ごしていた。夢だと思ってた、加賀美とのやり取り。
腹ペコだと暴れて、号泣して、加賀美の顔が余りに良くて落ち着いて
「自分じゃダメか?」と聞かれ、少し脅したら、彼は本気で
そして加賀美は有り得ない程美味い生気を持っていて
「恥っず…」
Aは顔を真っ赤にしてその場にへたりこむ。キスされて気絶した現実は、ちょっと耐えられそうになかった。
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あい(プロフ) - 温帯亭気圧さん» ありがとうございます!誤字ってました…恥ずかしい… (1月5日 21時) (レス) id: 77eb95d78f (このIDを非表示/違反報告)
温帯亭気圧(プロフ) - あいさん» リクエストありがとうございます〜!ちゃんと話を繋いで出来上がるまで少々お待ちください!ご心配もありがとうございます😌 (1月5日 19時) (レス) id: c0418335ef (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - リクエスト失礼します。本社で迷子になってしまっているところをymoiとkndに保護される内容を書いて欲しいです。最後になってしまいますが、いつも楽しく読んで頂かせています。大変なことが多々起こりますが、これからも体調に気をつけて元気に生活費して下さい。 (1月5日 10時) (レス) @page9 id: 77eb95d78f (このIDを非表示/違反報告)
温帯亭気圧(プロフ) - 雨さん» めちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございます😭 (9月9日 22時) (レス) id: c0418335ef (このIDを非表示/違反報告)
雨 - めっちゃ好きです!!!!! (9月7日 12時) (レス) id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:温帯亭気圧 | 作成日時:2023年7月7日 22時