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本当はバレンタインというものを知っていた。
人を知るために学校へ行けと言われる前は、よくお父様とお母様からチョコレートをもらっていた。バレンタインは相手に感謝を伝える日なんだよって教えてもらって、それからは私も作るようになった。
それが少し気持ち悪くなったのは、小学五年生の頃。私視点、人間が意識を持って明確な行動をするのはこの歳だと思っている。
四人程度の男が私の帰りを阻み、無理やりチョコと手紙を渡してきた。魔術を習わなければいけない身としてはストレス溜まり放題だったし、手紙なら目の前で破いた。他の皆もいた。
「君たちの好意は受け取りたくない。純粋な感謝の気持ちが伝わらないし、恋って気持ち悪いもん。」
恋愛、恋愛、恋愛、恋愛、恋愛。
恋愛脳ばかりが増えて、女にチョコを渡すことすら義務となって、自分が男友達に渡そうとすると「気があるんじゃないか」って視線も送られた。
ああ、殺したい。お前らの脳には恋愛しか詰まってないのか?ゴミが、愚図め。死んでしまえばいいのに。
高校に進学してからは、バレンタインなんて知らないふりをした。記憶から抹消することにも成功してみせた。
「......甘くない。そういえば二人とも、菓子作りには励んだことがなかったか。世間を知らん阿呆には早い行事だったか?」
マシュのスイーツケーキだけが妙に甘い。人間を始めたばかりのマシュが、一番この手に優れているのか。女は料理に強いという言葉は本当だったらしい。
...このカルデアには、あまりこちらに好意を抱く者はいない。世界を守らなきゃ、自分を守らなきゃってことに必死で、むしろ私に感謝を伝えるためにチョコを渡してくる。あの頃感じた気持ち悪い視線はない。
カウレスだけが好意的に渡してきたが...あれはノーカウントというものだな。だって夫だし。
「お返し...案外美味しいな、これ。」
アルトリア・キャスター「よしっ、A!ありがとうって伝えに行きましょう!」
「人の部屋にマーリン魔術で忍び込むなァ!!!」
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作者名:琲世 | 作成日時:2022年2月10日 21時