おわり ページ26
______カルデアが去ってから、私たちは蘇らせた妖精を生贄として魔力を供給した。
地下から這い上がった、私たちの何倍も大きい獣を殺すため。理性も何もかも失われた、世界を破滅させかねない獣を殺すため。
アルビオン、狐。この二つがなければ、私たちでも彼女を殺せたかどうか...ギリギリのラインだった。
春「......外の人間、どうする?」
女神「外国に移送しようと思ってたけど、それぞれで集落を築くなんて言ってるみたい。放っておきましょう。」
理性がなく、ただの一声でカルデアを潰しかねない威力があった。だからすぐに私たちとの世界を断絶させたかった。
一応狐のおかげでそれは防がれたけど...この怪我で遠くまで行けるのかしら。
女神「ごめんね、春。体が崩れてきているの。」
春「...気のせいだよ。遠くに行けば、きっと治るよ。」
一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月。
......向こうと時間は合わせてない。早く春と二人きりになりたくて、もう誰にも来てほしくなくて、この世界の時間だけを早く進めていた。
もう下半身はない。腕もない。二人きりで静かに過ごす前に、このまま死んでしまいそう。
春「英霊なのに不思議だよな、A。まるで本当に生きてるみたいだよ。」
女神「本当に...そうなったのかな...生きてる...?」
春「...ああ。まるで、じゃないな。本当に生きている。だから生きてほしいんだよ...A...」
五年が過ぎて、最後には顔だけになった。
二人でただ歩き続けるだけ。静かな場所で少し休んで、たまに誰かがいた小屋とか借りたりして。
...ほら、春。もう何も見えない。耳もないくせに聴覚が残って、喉もないくせに喋るための口が残っていて、すごい気持ち悪い。
女神「春...」
春「......ごめん。俺も今、死にそう。狼に襲われたんだけどさ...お前を守れて、よかったよ...」
女神「何も聞こえない...撫でて...春...」
春「......おやすみ。」
女神「ああ...ありがとう...どうか生きて...この世界が崩れるまで、長生きしてね...」
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作者名:琲世 | 作成日時:2021年12月29日 20時