誰よりも正義感に満ちた騎士 ページ18
私が産まれ落ちて、そこから人間どもを捕縛するまでの月日は短かった。
自分なりに人を学習し、人を憎むこと。それが私に与えられた命令だったので、私は自分なりに学び、自分なりに憎んだ。
だが憎みはせよ、騎士の名に恥じぬ行動はとりたいと思った。
セイバー「先の戦いで行方知らずの子を見つけた。お前が行く先は牢獄ではあるが、子と離れては辛かろう。お前たちの健康管理は私の仕事だ。私のために、健康でいてほしい。」
多くが私を何様だと思っただろう。だが、次の日に死んだ女は、子と共に礼を述べた。
......あの時、私は目から溢れたものを理解できなかった。戦地で目を瞑れば落ち着いたのに、目を開けばそれを流す。
それも、月日が流れるとあっという間に枯れ果てたものだった。
セイバー「また...流れた。これはなんだ...?」
ケルヌンノス「知らないの...涙よ。」
心臓の核を貫かれ、私は恐怖という感情と共に涙を流したらしい。
では、私が戦地で感じていたのは恐怖だったと?ではあの女に礼を言われたときは...なんだ?恐怖なんて感情ではなかった。
アルトリア・キャスター「自分がこの人たちを殺してしまうんだ、という罪悪感。もしくは子供を救えてよかった、という安堵からでしょう。」
セイバー「______。」
私は、罪を感じた?救えてよかったと、嬉しがっていた?
あんなにも人を憎んだ私は、ただ不器用なりに適当に憎んだだけだと。
セイバー「...私が...一番愛しているじゃ、ないか...悪い、ランサー...アルターエゴ......」
ケルヌンノス「......」
一瞬だけ、ケルヌンノスの向こうに赤い少女が見えた気がした。消え行く私は、その手を伸ばした。
モルガン「バーヴァン・シー...!」
セイバー「愛いなぁ...そうか...私は、お前のようなものを...美しいと...思った、のか...」
モルガン「...」
セイバー「羨ましい...私は...それを知らずに...消えるところ、だった、のか...」
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作者名:琲世 | 作成日時:2021年12月29日 20時