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血だらけになった羽、何も映さなくなった目。だけど私の勘は方向を告げているのです。彼らにとって一番安全な場所を、私は知っているのです。
「...もう一度...てんいを...」
マシュ「先輩...!」
「お願いします...全部捧げる...だから...私が、あいした、ひと...」
寒い、寒い、寒い。こんな日も誰かが強く抱きしめてくれた気がする。誰かに泣かれることなんてない。私に泣いていいと言ってくれた人がいた気がします。
誰だっけなぁ。あの男の人...既婚者だっけ?子供もいたんだっけ?
羨ましい。きっと美しくて、とにかく優しくて...強い人だったんでしょう。私の旦那さんだったら、私の人生はもっと彩られていたのでしょう。
カエデ「ヒール。」
「......おかあさん?」
カエデ「...母親は子を支えるものなんでしょう?ここにある私の命...全部あなたに託す。だからロマニに助けを求めなさい。ジャゴヌバと戦ってはダメ。あなたは明日、孤独のままあの子を殺さないといけない。」
「...殴らないの?こんなにも血を流して、彼らの願いに応えれなくて...魔術も覚えれなかった。二人の期待に応えれなかった。私、汎人類史なんかより存在する価値がない。カルデアに戻る資格すら、私にはないんだと思う。」
カエデ「そんなことはない。」
最初の頃はイヴァン、スカサハ=スカディ、始皇帝のように自分の世界を守ろうなんて気持ちもなかった。ただ迷惑をかけただけ。
「でも...最後に死ねるなら幸せだね。最後ぐらいはあなたに追い付きたい...認められたい。今度こそ役に立ちたい。」
カエデ「そんなこと...望まないわ。ごめんなさい...ずっと貴女を一人にして...」
「...?」
カエデ「あの人が貴女を本当に嫌っても、私だけは貴女の味方だから...」
嘘だ。私が純潔を奪われたあの日、お母さんは私を殴ったじゃない。
カエデ「あの男たちは殺した。貴女を攫おうとした人も殺した。全部遅くなって、どうしようもない怒りばかりが増して...貴女を孤独にしてしまった。お願い、どうかこれだけは信じて。私は貴女を...永遠に愛しているから...」
......
「......目は、いつか見えるだろうか。」
藤丸「A、もう...!」
羽で優しく彼らを包む。傷だらけの自分なんかどうでもいい。彼らが無事でいてくれるなら、それでいい。
「転移。」
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作者名:琲世 | 作成日時:2021年10月20日 0時