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サーヴァントならこの傷ぐらい、簡単に治せる。

でもマスターからの魔力供給は途絶えた。正確には、彼らがこの特異点に存在できるぐらいの魔力しか送られない。そんな貴重な魔力を、この火傷の回復に回すのは不可能だった。

マーリン「この肉もいただいていいのかい?」

ベルマ「さっき部下と食べたからな。全部食え。」

マーリン「...いや...半分にさせてもらうよ。他人のためにわざわざ自分を捧げなくてもいい。人への気遣いはね、自分の身を大切にしてこそ成立するものだ。」

世界が壊れていく。唯一守ってくれる人が、本当は破壊する側だった。それを聞けば民はどんなに泣き崩れることだろうか。

マーラ「...お姉ちゃんが?」

一番苦しいのは、彼女の妹だろう。ずっと信じていたのに裏切られたんだから。

マリア「...裏切り、ではないですね。彼女は彼女なりに救おうとしてるんです。」

クオード「ん...?」

マリア「この世の命を一掃し、新たに世界を創造する。人の肉体と魂が融合している瞬間が一番嫌なんですよ。どんなことでも、それが一番成功率が低いんだし。でも彼女には成功率がどうとか...そんなことは忘れてしまったんでしょうね。嘘つきは本当の自分も見失うって言いますよ。」

クオード「まるで自分が経験者かのような言い方だな。」

マリア「ええ、経験者です。二人のご主人様が傍にいた私は助かりましたが、重い使命を持つあの人には誰もいなかった。救おうとする度に死んで、その度に泣いてたのかと。心当たりはありませんか?」

クオード「あー...ありすぎるな。」

マリア「...何度も見てるくせに救えなかった。今回の事態、あなたたちの自業自得でもあるんですよ。たった一人の冒険者が世界を救う?そんなの苦しいに決まってるじゃないですか。一度故郷を滅ぼされたあの人には重すぎたんですよ。」

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作者名:琲世 | 作成日時:2021年10月20日 0時

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