隣にいること

きっと変えていける ページ18

*nakama*







明け方、まだ目覚ましのアラームが鳴っていないのに目が覚めた。

しとしとと雨音が聞こえとる。

時計に目を向ければ、時刻は4時半を少し過ぎた頃。さすがに起きるのにはまだ早いやろ。


薄暗い天井をボーッと眺めていると、誰かが階段を降りてくる足音が聞こえてきて、そのまま遠ざかって行く。

誰かが起きたんかなぁ、なんて思っとったら、咳き込む声が聞こえてきて思わず身体を起こした。






中間「…神ちゃん？」


神山「っ、ゲホッゲホッ、ひゅー。淳太ぁ？ごめっ、ひゅー、起こして、もうたっ？ゲホッ」


中間「いや、元々起きてたんよ。それより吸入は？」


神山「寝る前にっ、、アドエア、とぉ、ゲホッゲホッ、ひゅー。30分くらい、前に、ひゅー、、メプチン、吸ったんやけどね、っゲホゲホッ、｣





階段を降りてリビングのドアを開ければ、小さく電気を付けたリビングのソファに埋もれるように、前傾姿勢で座る後ろ姿が見えて、声をかけた。


咳き込む度に身体が揺れ、ヒューヒューと苦しそうな呼吸音と共に肩が上下に動く。

吸入器を握りしめた指先にパルスオキシメーターを挟めば、小さな液晶にはいささか心もとない数字が。


ネブライザーに切り替えるギリギリのライン。

最近は落ち着いてたんに、急な夜間発作ってのがちょっと怖いな。





中間「落ち着かへんねぇ、メプチンもう1回吸おうか」


神山「…ん、ひゅ。ふー、すぅーー…、はぁ、、ひゅっ、ゲホゲホッ」


中間「うがい、いけるか？支えたるからゆっくりでええよ」





神ちゃんが常用してる吸入薬は2種類。日常的に服用してるアドエアと、発作が起きた時用のメプチン。

このメプチンが効かんとちょっと厄介やで。


あんまり経口ステロイドは使いたないし、副作用出てもしんどいからなぁ。


お湯を沸かし白湯を作って、マグカップに入れる。あいにく、いつも神ちゃんが飲んでるデカフェの紅茶がどこにあるか俺は知らん。





中間「少しは落ち着いたな」


神山「おん、ありがとう。はぁーー、久々しんどかったわ」


中間「せやんな。最近は落ち着いとったイメージやけど」




俺の記憶が正しければ、神ちゃんが最後に大きめの発作を起こしたのは今年の始め。

お正月の連勤の過労と、何年ぶりかの寒波が重なったことが引き金になって、入院までせなあかんくなったんやから。




神山「天気のせい、かもなぁ…」



明るくなり始めた窓の外からは、雨音が絶えず聞こえ続けていた。

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