隣にいること

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*kiriyama*






論文やら学会の資料作成やら、今日はやけにデスクワークの仕事が溜まっとった。通常業務に加えてこれらもやっとったから定時で帰れるわけもなく、やっと家に帰れたのは、日付の変わるギリギリやった。




桐山「ただいまぁ」



玄関に置いてある靴を見て、今、家にいるのが誰なのかを何となく想像する。この靴は、流星やな。それから、望。今日も一般外科は忙しそうやったけど帰ってこれたんや。んで、革靴の中に一足だけおいてあるこのパンプスがAのやね。


自分の部屋に荷物を置いて、ダル着に着替え、ダイニングに行くと流星が座っとった。なんや、流星も今日遅かったんや。




A「あっくん、おかえりなさい。今日、私も帰るの遅くて簡単にチャーハンにしちゃった」


桐山「ただいま。あぁ、全然ええよ、うまそうやん。いつもありがとうなぁ」



俺らドクターの7人は、どうしたってシフトが不規則やしオンコールもあるし、患者さんが心配なときは家に帰らんで、病院に泊まり込むこともある。それに比べて、Aはナースやからある程度シフト通りで、家に居る時間も長いから、家事を任せっきりにしてしまう。

ホンマにいつもいつも助かっとるんよ。これが一人暮らしやったら絶対カップラーメンやからな。




藤井「ごちそうさまでした」


A「あれ、りゅうくんもういいの？足りた？」


藤井「今日、あんまお腹空いてへんねん」





なんとなく疲れてそうな流星を横目で見ながら、チャーハンをかきこむ。はぁー、うま。やっぱ、家で食う飯が一番やな。おかわりをよそいに、キッチンまで行くとふとゴミ箱に錠剤のシートが捨ててあるのが目に入った。

職業柄、何となーく気になってチラッと確認する。あ、ブスコパンやん。誰か胃でも痛いんか？




桐山「なぁ、ブスコパン飲んどるの誰？腹痛いん？」


藤井「あー、俺。なんか、ちょっと、変やねん」


桐山「いや、変ってなんやねん。てかなんで俺に相談してくれへんかったん？家に専門医が居るんやから、OTC(市販薬)買わんでも良かったやん。ちょっと傷付くんやけどぉ」


藤井「照史に診てもらって薬買うってなると、自家診療の申請とかめんどいやんか。別にへーきへーき」




そう言って自分の部屋に戻っていった流星の後ろ姿を見つめる。

平気って言いながら、腹をかばうみたいに背中丸めてるやん。ったく、素直に痛いって言えばええのに。


まぁ、ええわ。さっさとおかわり食べよーっと。

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