見果てぬ夢 (ページ44)

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「飲んでてよかったんやで。せっかく先輩の奢りやのに。」

「先輩送るほうが大事ですよ。」

はめられた。

高橋の言葉を鵜呑みにした私の前に現れたのは、紛れもない悩みの原因。

「…高橋くんが好きなんですか。」
「え、」

「仲良さそうやったから。」

「同じ学科なだけやで。別になんもない。」

彼の気持ちを弄んでるのはむしろ私の方なんかもしれん。
"友達から"なんて言って、こんな関係をダラダラ続けて。

「今年の入試で初めて先輩見て、好きになりました。」

教授に頼まれて無理やり手伝わされた試験監督。
試験の最中に消しゴムを落とした子がいて、それで。
緊張してるその顔が一年前の自分と重なって
思わず"がんばれ"って口パクで伝えた。

「…あ。」
「あれ、めっちゃ嬉しかったんです。」

知らない子やと思ったのは
彼が制服を着ていなくて、髪色が変わってて、
なんて言い訳してもその笑顔は変わってないのに。

「やからほんまに、先輩しか見てないです。

…俺と、付き合ってくれませんか。」

きっと"お友達"を始めたあの日から、
こうなることは決まってたんだろう。

なんて言ったら高橋は

「俺は知ってたで。」って言って笑った。

春の、暖かい風だった。