見果てぬ夢 (ページ39)

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"ごめん、気付かんかった。"

慌てて送ったメッセージは既読にならない。
初めて丈くんからかけてきてくれたのに。
自分でかけないと決めたくせに、それはそれで悔やまれる。

返信が見えないように携帯を布団に放り投げて、
ぎゅっと目をつぶった。

好きになったのは、はっきりとは目に見えない彼の優しさだった。

『…帰らんの。』

『ヘヤピン、無くして。』

クラスの男子と話している時は、面白いことをして皆を笑わせていて。それなのに、一人でいる時は静か。

その時の丈くんはクールに見えるけど、意外と面倒見が良くて困ってる人を放っておかへん。

『どこで落としたか記憶にないん？』
『分からん。昼休みには無かった。』

『…ちょっと理科室見てくるわ。』

そんな一面を知った時には、もう好きになってた。

『これか？』
『あ、！それ！ありがとう！』

『大事なら落とさんようにな。』
『うん。』

私はいつも聞いてもらってばっかりで丈くんのことは何も知らんのかもしれん。私も何か、彼にあげたいのに。