見果てぬ夢 (ページ34)

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静かなオフィスにタイピング音だけが響く。
1時間、2時間…
作業が終わる気配はない。

「帰りにさ、お疲れ会でもする？」
「お疲れ会？忘年会の直前に？」

「あー、忘年会もあるな。」

西畑くんはお酒にあまり強くないのだと、いつかの同期会で聞いた。先輩たちのいる飲み会では断りづらくて困るのだと。

「Aちゃんと2人ならいくらでも行くけどな。」

「…え？」

思わず手を止めて彼の方を見る。
気付いているはずなのに、彼は目を合わせないまま言葉を続ける。

「家帰っても1人やし、寂しいやん？Aちゃんが付き合ってくれるって言うなら会社来てよかったって思うんやけど。」

"あかん？"

可愛らしくはにかんだ顔に勝てなくて頷いた。
西畑くんは絶対、自分の可愛さを自覚してるタイプだと確信して。

「よし、じゃあ仕事頑張ろ〜楽しみやなぁ。」

私もパソコンに向かい直して手を動かした。
彼を待たせてしまわないように。
そして、楽しみな気持ちに背中を押されて。