太陽の街【幸村精市】 (ページ8)

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『皐とあの公園に行く予定なんだ。
写真、後で見せてあげるよ。』

丸井の携帯に届いたのは、
スタンプと共に送られてきたメッセージ。

字面だけで、相当嬉しいという事がわかる。

｢幸村くん、元気になったんだ。｣

丸井はほっとした。
以前、彼の様子が気になり家に訪ねた時、
幸村の目は少し虚ろだったから。

声は明るかったが、表情は暗かったのだ。

そんな彼は、｢太陽の街｣を知らないか、と
どこか必死な様子で聞いてくるものだから、丸井は話してしまおうか、悩んでいた。

もしも、数日経っても幸村の様子が変わらなかったら。
また、｢太陽の街｣について聞いてきたら。

丸井の知る｢太陽の街｣の真実は、
その人自身の幸せが、｢街｣と呼ばれていることだけ。

丸井自身が知ったのは、もう少し前のこと。
今更噂になった話ではなく、
テレビを見ていた時にニュースで見たことがあったから。

そのニュースで流れていた情報よりも、
今は明らかになってきてる事が多い。

丸井は棚に飾ってある写真立てを持ち上げる。

この事実を知ったのは、写真を撮った時、
今から1年前に遡る。

｢もう、あれから1年経っちまったんだな……｣

懐かしいような、つい、最近の事のような。
苦く、冷たい春先の出来事。