11話 ページ11
｢あの、名前を…｣
ドアがガラリと開いた。
｢失礼します｣
｢おお、やっと来たな本田｣
その人が嬉しそうにドアの開いた方に目を向ける。
私が意を決して聞こうと思ったのに、奴に阻まれたようだ。ウザイ事この上ない。
｢ギルベルトくん、頼んでおいたのに任せっぱなしにしてしまってすみません。…おや？そちらの見慣れた方はもしや…｣
この人ギルベルトって言うんだ…！
よかった、知れて。
それにしても何故 奴が来ただけでこんなに嬉しそうな顔を…
私が怪訝そうにたった今図書室に入って来た本人を見ていると
｢スルーな上に随分変わった挨拶の仕方で。相変わらずですね貴方も｣
｢…なんで菊ちゃん学校に？自宅警備ほっぽいてどうしたの？｣
｢自宅警備員はとっくに辞任しました｣
そっか…この先フィギュアを買うお金も無くなっちゃうね…
｢なんだよお前ら知り合いだったのか？｣
｢この子とは小さい頃から家族ぐるみで少し…今も家が近いんですよ｣
奴がそうですよね？と同意を求める様に見てきたので一応頷く。
｢へー、言われてみれば何か似てるしな、お前ら。｣
そ、そんなはず…私はこんな薄情じゃないはずだ…
当の本人は手で口元を隠しながら控え目にふふと微笑んで言った
｢そうですか？私からしたら正反対なお2人が知り合いという事の方が驚きましたが｣
｢正反対？｣
確かに私は少し目立たない方だけれども。
正反対って言うまで暗いかな、私。
他人に言われると悲しい。
私が目立たないのは分かるけどプロイセンくんはどうなんだろう？
プロイセンくんの噂は1度も聞いた事が無い気がする。
でもこんなにかっこよくて太陽みたいな人は目立つだろうし、女子からしたら噂の的だろうし。
ちら、と隣にいたギルベルトくんを盗み見ると居心地が悪そうにしている。
｢あー、まあ…そうだな。｣
｢？｣
私はその意味を理解出来ないでいた。
…そもそも3年間この学校で過ごして、今までギルベルトくんを全く知らなかった私ってやばいんじゃないか？
こんなにカッコイイんだ。1度くらい耳にはする筈だろう
私はギルベルトくんをちらちら見ながら1人もんもんと少しでも何処かでそんな噂について聞いていないかと記憶を辿っていると
菊ちゃんが私が広げている提出課題を見て言った。
｢…もう予鈴まで1分も有りませんが大丈夫なんですか？｣
………
泣きそうになり菊ちゃんの方を見上げると綺麗に微笑み返された。
｢善処します｣
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作者名：夢々煙 | 作成日時：2017年10月15日 20時
