たい焼きはこしあん派 ページ16
ピンポーン
休日の我が家。
インターホンに映るのは真っ黒で帽子を被った男の人。
でも映った顔はニコニコのヘチャンで玄関の鍵を開ける。
Hc「Aちゃん、食べよう？」
ヘチャンがお土産に。と持ってきてくれたのはたい焼き。
宿舎から私の家に来る途中見つけたらしく、わざわざタクシーを待たせて買いに行ってくれたらしい。
「あついよ」と袋から取り出して渡してくれたたい焼きはこしあんだった。
「ん！こしあん！」
「Aちゃんこしあん派？」
「うん！」
「おれも」
二人で夏に食べる季節外れのたい焼きはなんだか不思議な気持ちになった。
「あつい！」とおでこに汗をかきながら食べるヘチャンのおでこの汗を拭けば嬉しそうに笑うヘチャン。
「たい焼きね、まよったんだよ」
氷の入ったお茶を飲みほしたヘチャンが、「ついてるよ」、私の口の端についた食べかすを取って笑う。
あつあつのたい焼きを慌てて食べたせいで口の中をやけどした気がする。
「夏なのにめずらしくたい焼きの屋台が見えて」
「口の中やけどした、」
「大丈夫？お茶のみな。んで、なんか久しぶりに食べたくなった」
ヘチャンが渡してくれたお茶を飲み、氷を口に含んで少し痛む場所を冷やす。
「わたひもなつにはべたのはじめて」
「ふふ、飲み込んでからでいいよ」
ぼりぼりと氷を噛んでいると急に近づいたヘチャンの顔。
「へち、ゃん、ちかいっんぅ」
あっという間に近いづいた距離はゼロになって、冷えた唇にヘチャンの唇がくっつく。
「あーーーAちゃんかわいいっ！」
どこにそれを感じたのか本当にわからないけど、ぎゅっと私を抱きしめたヘチャンはそのまま体を左右に揺らす。
仕事中、幾度となくそんなヘチャンを見てきたけど、やられているメンバーはこんな気持ちなのか。と最近気が付いた。
「Aちゃん」
「なんですかー」
離れない腕の中で顔を上げれば口を尖らせた笑顔のヘチャン。
「ぽっぽして？」
「ん、なんでよ」
「いいじゃん、おつかい行ってきたから！」
そう言って目をつむるヘチャンの口にちゅっと唇を合わせれば満足そうに笑う。
こんなちょっとのキスでそんなにも幸せそうな顔をしてくれるなら。
もう一度、私から唇を重ねれば、幸せそうな顔のヘチャンと目が合って私も笑ってしまった。
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作者名：メリッサ | 作成日時：2022年8月3日 20時
